【山縣社長に聞く】アライドマテリアル酒田製作所には世界の課題解決に向けた技術があった! ~人類初 超大型国際プロジェクトITERとは~
地上につくる小さな太陽 ITER


ニッチでありながら多様な産業分野で重要な役割を果たしているアライドマテリアルだが、最先端分野への貢献にも注目したい。同社では、保有する高い技術力が評価され、フランスで建設中の核融合実験炉イーター(以下ITER)プロジェクトにおいて重要部品である「ダイバータ」に使用されるタングステンモノブロックを供給している。
持続可能なエネルギーの確保は現在、人類にとって最も重要な課題とされている。化石燃料に依存している現代社会はCO2の大量放出を伴い地球温暖化を加速させており、石油・石炭・天然ガスは有限の資源であるうえ、エネルギーの安全保障の観点からも持続不可能とされていることから、地球環境保全を考慮した代替エネルギーの開発は急務なのである。
そこで、人類が現在直面している課題解決策として開発が進んでいるのが、世界7極で進められている国際プロジェクトがITERだ。太陽が光り輝く仕組みを地上で再現できればCO2を排出することなく、高い安全性で理想的な発電ができるものとして開発が進んでいる。
同社の深谷取締役熱マネジメント事業部長は、ITERについて、「安全でクリーンで持続可能な未来のエネルギー源として非常に期待されています。核融合反応は太陽と同じ原理で重水素と三重水素を核融合させるものです。また、1億℃以上のプラズマ状態でないと核融合反応は起きないため、これを実行するのが非常に難しく、その実験炉がITERなのです。ただし、この時にできるヘリウムや不要な粒子があると1億℃の温度が維持できなくなりますので、これを排気しなければなりません。それを排気する重要な箇所は非常に高い熱を受け止めます。そこに、弊社のタングステンモノブロックが使用されているのです。」と説明してくれた。

ITERの特長に高レベルの放射性廃棄物やCO2が発生せず、非常にクリーンなエネルギーであることが挙げられる。しかも燃料は海水から得られるため、無尽蔵で持続可能なエネルギーなのだ。ちなみに燃料1グラムで石油8トンに相当するエネルギーが得られるとのこと。
1億℃という温度を維持するのは非常に難しい技術のうえ、核という言葉からなんとなく、反応の暴走や爆発コントロールが難しいのでは? とイメージしてしまうが、燃料を止めたり、熱を加えなければ反応は止まることからメルトダウン(炉心溶融)の心配がなく、非常に安全性の高い技術とされている。非常にざっくり言うと、核融合で生まれるエネルギーは水素同士が結合するもので、高レベル放射性物質が発⽣しない。すでに広く実用化されている原子力発電はウランやプルトニウムを核分裂させてエネルギーを得るので高レベルの放射性廃棄物が発生するので核融合とは仕組みが違う。つまり、ITER持続可能で安心安全なエネルギーを得ることができるという人類にとっては夢のような技術なのである。