【山縣社長に聞く】アライドマテリアル酒田製作所には世界の課題解決に向けた技術があった! ~人類初 超大型国際プロジェクトITERとは~
ITERの守護神〝割れない〟タングステンモノブロック


1999年から核融合炉用のタングステンの研究開発をしている同社によると、「タングステンは金属の中で最も融点が高く、熱膨張率が低く超高温環境下でも形状安定性が極めて高いという特性がある。」という。この特性に目を付け、長年にわたって蓄積してきた粉末冶金技術と熱間加工技術の総合力で誕生させたのが同社の割れないタングステン、〝タングステンモノブロック〟なのだ。
1億℃の核融合反応を連続するためには、強力な磁場をつくり、プラズマをドーナツ型の真空容器(ITERのトカマク型)に閉じ込めなければならず、その下部にはプラズマからの熱流や粒子の流れを受け止める機器、〝ダイバータ〟がある。この機器はヘリウムや不純物を排気し、プラズマを安定的に閉じ込めるための最も重要な機器とされている。この機器なくしては1億℃の核融合反応は連続しないのだ。
このダイバータの外側ターゲットと呼ばれる部位には同社の30×30×10mm程度のタングステンモノブロックに冷却管を通したものが1つのカセットボディにつき約20列並んでおり、真空容器下部に設置されるカセットボディは合計54基となる。タングステンモノブロックの総計は外側で約20万個、内側で約13万個にもおよび、このうち1個でも表面が熱により溶融してしまえば機器の破損につながり核融合反応は維持できないのだから、タングステンモノブロックはITERの守護神と言っても過言ではない。
タングステンモノブロックは、冷却管を通すために中央に穴をあけており、その穴の周囲には純銅のレイヤーがクッションの役目として付いている。「タングステンと銅では熱膨張率も違うので高度な接合技術と量産化が必要でした。」と苦労を滲ませた深谷取締役。
ITERの守護神として、同社のタングステンモノブロックが大量に使用されていることが分かったが、酒田製作所は量産体制を強固にするため、工場内の自動化を構築している。担当した熱マネジメント事業部技術部ITER技術グループの飯倉マネージャーは、「以前は手動による体制でしたが、コストを押さえつつ安定した高い品質を維持するためには新たなラインを立ち上げる必要がありました。」と話す。