黒田精工 世界最大級の高速精密プレス機でモーターコアの生産性を飛躍的に向上

 

EVを支えるグローバルな生産体制強化へ

 EVといえば限られたスペースで高い出力が必要になる。その為、発熱対策のニーズが高まってきた。発熱対策として冷却機構を持つモーターコアが登場し、近年ではこの冷却構造が非常に複雑化してきている。この構造はEVメーカー各社が特有の構造を持っている。なぜなら冷却構造は各社の〝差別化のキモ〟であり、熾烈な競争が繰り広げられているからだ。冷却構造の独自技術は、最終商品の価値につながりアピールポイントにもなる。このように時代とともにモーター技術は進化し、このニーズにいち早く応えるために黒田精工が目を付けたのが世界最大級の大型プレス機であり、これを導入することで積層時の課題解決を導いたのだ。

 担当技術部長は、「メインのターゲットは2列化対応になりますが、さらなる付加価値を付けるためにφ300mm越えの大型モーターコアの生産対応、さらに2列共取りから3列共取り化への更なる生産性向上を見込んでいます。」と説明してくれた。『MSP-4000-430』を導入することで、φ180mmサイズの3列共取り金型を可能にし、加えて大径コアおよび複雑構造製品の2列化金型も実現、歩留も向上し、鋼材削減も実現したので経済効果も高く、顧客にとってもよりスピーディに納品されるため競争力強化の一助となる。

 黒田精工といえば、EVモーターの小型化に貢献する独自技術〝MAGPREX®〟を保有している。この技術は、モーター回転子のマグネット孔内にマグネットを熱硬化性エポキシ樹脂で強固に固定する技術だ。

 また、回転時にバランスを良くするために鍵を握るのが、マグネット孔内に充填する樹脂。MAGPREX®によりこれを定量管理することで、マグネット孔内の樹脂充填量が一定となる。そのため回転時のバランスが良いのだ。樹脂充填時の射出圧力が小さいことから射出整形後の回転子の変形が小さく、熱硬化性エポキシ樹脂の採用で放熱性が高いメリットもある。

 長野工場は、このMAGPREX®ラインを設置し、モーターコアの量産プロセス確立のためのマザー工場という位置づけにあり、昨年は新工場棟(第8工場)が稼働している。

 石井専務は、「生産したモーターコアを顧客に提供するとともに確立したプロセスを国内外の提携先を含めたモーターコア量産工場に展開し、グローバルな生産体制の拡充につなげています。」と話す。

長野工場は大型機・高級機がズラリ! 

さらなる充実を目指して建て替え中! 

 筆者は昨年、長野工場を取材しているが、なんと! さらに工場内が拡充されており、様々なメーカーの高級マシンがズラリと並んでいる。拡張ぶりに驚いていると、石井専務は空いている場所を指し「ここにマシニングセンタを入れます。」と旺盛な設備投資意欲を示した。秘密が多い工場内なので写真はほぼNGなのだが、工場内で、ハイブリッド用のモーターとジェネレーター用のものの量産前の試し加工を拝見することができた。

 「ローターが出てきてもステーターが出てきてもこの1ラインで全てバーコードを打ち、高さを測定してゲージを入れてという従来は人の手で作業をしていた一連の流れを全て機械でできるようになりました。」と石井専務。

 MAGPREX®、樹脂固着用のラインでは、駆動用モーターコアも発電機用モーターコアも両方できるように汎用機を取り入れていた。ロボットでマグネットを入れて、加熱をしたり、樹脂を入れるなどの一連の工程ができる設備を拝見。

 「できる限り自動化をして、できないところは人が行う。」とのことだが、人も機械も多忙な様子で現在、第4工場も建て替え中だという。

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