トップ戦略と現場力のダブル公開! ~三井精機工業「工場見学会2025」 ~那須社長に聞く~
航空・宇宙分野に強み ~先人が歯を食いしばり汗と涙を流して粘り抜いた~

― 先ほど工場内を見学させていただきました。今回は前回と比べ航空・宇宙産業向けの機械が多いように感じました。
那須 今回、たまたま受注を受けたものがこの分野に多かったこともあります。私たちの強みは、〝高精度・高剛性〟を確実に担保し、長く使える機械の信頼性を提供できることです。この強みは、航空機や宇宙分野と非常に親和性が高いと考えています。業界ごとに工作機械の棲み分けはありますが、航空・宇宙分野は、私たちにとって実績も豊富で、求められる技術がまさに活かされる分野でもあります。
― 現在国内外の比率を教えてください。
那須 6割が国内、4割が海外です。海外のうち2割はアメリカで、その他2割が韓国、中国、台湾で、北米が大きなマーケットになります。
― 特に航空・宇宙産業は安全・認証・品質が絡んできますので、一度使った設備を変えにくい〝カタイ市場〟です。
那須 特に航空機産業は機体に長寿命が求められ、安全と品質に関わるのでリスクを嫌い、利益を確保しやすい分野ですが、参入するための“汗のかき方”が尋常ではありません。川上もよく『最初はどれだけ損したか分からない』と言っていました。航空機産業で認証を取るまでは、年単位で進められ、気の遠くなるような資料作成や調整などの業務があり、膨大なコストと時間を要します。航空機メーカーも一度認めた設備メーカーを変えることは、安全と品質の面から全体の見直しが必要になり、工程をイチから構築することになりかねないので実績のある会社のものを使い続けるほうが合理的です。そこがカタイと言われる由縁ですが、そもそも私たちがこの分野に参入できたのは、今から40年以上前に、後に社長となる岩倉が航空・宇宙産業に目を付け、何度も何度も北米に足を運び、先方に難題を突きつけられても歯を食いしばり、汗と涙を流して粘り抜いた結果です。その努力の積み重ねが、礎になって今に引き継がれています。
― 航空・宇宙産業は、高度な材料や加工技術などが多く含まれ、国家レベルの安全保障につながるため、国際的にも最も厳しい機密管理が求められます。ユーザーの要望に沿った機械を利益確保しながら効率良く作っていくのも大変なことだと思います。
那須 おっしゃる通りです。弊社は大量に機械を作って売るビジネスモデルとは違うので、航空・宇宙産業は相性が良い一方、機械の生産性を改善するのは決して容易ではありません。売上規模が劇的に増えるわけでもありませんし、実際、売上は大きく変わってはいません。過去には作り方の不手際でご迷惑をおかけしたり、機械の納期が遅れたりしたこともありました。こうした“無駄の無駄”を省き、効率化していくことこそが、先ほど触れた構造改革につながります。これを進めることで、一定の利益を安定して確保することが可能になります。現在の規模で、従業員やその家族が安心して生活できる環境を守りつつ、社員みんながハッピーに働けること。そして、『三井じゃなければ困る』とお客様に思っていただける存在であり続けること。これこそが、私の目指す道だと感じています。
― 三井精機ファンの皆様にひとことお願いいたします。
那須 ファンを裏切らないために、まずは既存のお客様が安心して長くお使いいただけるサービスをさらに充実させ、お客様のご要望に沿った機械を、一台一台しっかり作り込むことに全力で取り組んで参ります。これからも、信頼と品質で期待に応え続けるよう全社一丸となって頑張ります。
―ありがとうございました。
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