機械振興協会 「第60回(令和7年度)機械振興賞受賞者」を決定 

 

機械振興協会 会長賞(研究開発)〈50音順〉

「鋼管の表面欠陥を自動で研削除去するロボットシステム」
JFE スチール(株)

 

【選定理由】
 油井から油やガスなどを汲み上げる鋼管には高温高圧とともに、酸による腐食負荷がかかる。継ぎ目がある溶接管と比べてシームレス鋼管は製造難易度が高いが,継ぎ目がないため高強度かつ耐食性や靭性が優れており付加価値も高い。しかし、製造時に大きな変形を与えるため、表面欠陥や疵が発生し易く、グラインダーによる手作業で疵を削り落としていた。しかし、この作業は粉塵による負担も大きい3K 作業だったが、鋼管はサイズも多く、表面欠陥も様々で自動化が難しかった。本業績ではあらかじめ疵がある部分を作業者がマーキングすることで、マーキング部分を3Dカメラとロボットアームで鋼管の形状と欠陥を自動認識して、6軸ロボットによるグラインダー仕上げを自動で行う装置を開発した。また、研削仕上げ時に砥石押し付け圧力と移動速度を制御して研削による段差の発生を抑えることで高品質な研削加工を実現した。これにより、作業効率が約2.5倍になり生産性が向上するとともに、作業者を3K作業から解放した点を評価した。

 

「二酸化炭素の回収を実現する業界初の高耐久ドライ真空ポンプ」
神港精機(株)

 

【選定理由】
本業績では大気中から直接CO₂を回収するためのDAC(Direct Air Capture)を実現するための真空ポンプを開発した。DACでは大量の空気を触媒に送り込み、CO₂を触媒に吸着させ、このCO₂を高温蒸気で分離させ、冷却器に吸引してCO₂を回収する。この際、吸引に使用する真空ポンプにはCO₂を回収するための強い吸引力と、大気中の塩分や水とCO₂ から発生する炭酸への腐食耐性が求められる。強い吸引力発生に関しては不等ピッチスクリューとすることで強い吸引力と効率化を実現し、同社のドライ真空ポンプ技術によって高い耐腐食性を実現している。また、真空ポンプを構成する2つのスクリューが線接触ではなく面接触する形状として、異物混入時の耐久性とシール性を確保した点を評価した。

 

「硬質線材に対する均一薄膜めっきを可能にしためっき技術(装置及び方法)の開発
帝国イオン(株)
(株)岡崎製作所
(国研)量子科学技術研究開発機構 那珂フュージョン科学技術研究所

 

【選定理由】
 世界7極(33か国)が参加する核融合実験炉ITERにおいて核融合で発生する中性子量を正確に測定することは、核融合炉の出力を正確に評価する上で重要な技術となる。その中性子計測システムは高温のプラズマや大量の放射線に暴露するため、硬質ステンレス皮膜内に導体と絶縁のための二酸化珪素を充填した特殊なケーブルが用いられる。このケーブルは、プラズマを加熱するための高出力マイクロ波による過熱を受ける一方、プラズマ崩壊現象に伴う誘導電流による強い電磁力を受ける。これらの影響を同時に低減するために硬質ステンレス皮膜上に5±1 ㎛以内に厚さを制御した銅めっきが必要となる。本業績ではケーブルを仕上がり形状に近い螺旋状にした後、円筒状の容器内で回転させながらめっき処理を行うことで均質な銅めっきを施す技術を開発した。また、ケーブルへの熱負荷が高い部分のめっき厚さを変える技術を開発した他、めっき設備を移動可能として開発中に生じた新たな要望にも柔軟に対応できるようにした点を評価した。

 

「精肉スライス商品づくりの省力化を実現するパック定量スライサー」
(株)なんつね

 

【選定理由】
 従来の食肉スライサーでは、様々な形状の食肉を定量にスライスして食品トレーに見栄え良く収められる状態にすることが難しかった。特に薄切り肉は低温に調整した食肉でないとスライスした食肉が回転刃に付着してしまい、等間隔に並べられた状態に切ることができなかった。本業績では食肉を三次元計測して所定の厚さで何枚スライスすれば設定した重量になるかを自動的に計算することが可能で、薄切り肉が回転刃に付着する問題に対しては、回転刃に取り付けられるはがし装置を開発してチルド冷蔵庫から出したばかりの食肉でも回転刃に付着せず食品トレーに乗せやすい状態でスライス可能とした点を評価した。

 

「高速・高強度異材接合法によるリチウムイオンバッテリー用電極端子」
ファインネクス(株)
富山県産業技術研究開発センター

 

【選定理由】
 電気自動車等に用いられるリチウムイオン電池は、セルと呼ばれる複数の二次電池で構成される。セルの正極には酸化しにくいAl、負極には低電位下においてもリチウムと合金化しないCuが用いられる。セルは多数直列接続して用いられるが、この時、正極のAlと負極のCuを電気的に接続する必要があるが、AlとCuは接合すると硬くて脆い金属間化合物が容易に生成され、厚みが1~2㎛であっても強度が低下することが知られている。本業績では低温鍛接法(材料融点の30%~70%で鍛接)を用いて銅電極にAlを被せ、金属間化合物の厚さを100nm程度とした電極を開発し、安価で軽量なアルミバスバーによる接続を可能とした。本端子の鍛接は一回のストロークで複数の加工を連続的に行う複動金型内で行われ、無駄となる端材も発生せず大量生産できる点を評価した。

 

「小型軽量・高静粛性の高出力ロータリーエンジン搭載PHEVの実用化」
マツダ(株)

 

【選定理由】
 プラグインハイブリッド車(PHEV)は、平日の近距離走行ではバッテリーの電力を使ってモーターのみで走行し、休日には、エンジンで発電した電力を併用することで長距離走行が可能となる。しかし、この場合休日にしか使わないことが多いエンジンと発電機の重量と容積は大きな負担となり、モーターの電力消費も大きくなってしまう。本業績では一般的なレシプロエンジンと比べて小型軽量で、静粛性も高く、騒音が少ないモーターとの親和性も高いロータリーエンジンを用いたPHEV車を開発した。しかし、発電用ロータリーエンジンは従来の走行用とは全く異なる性能が求められ、さらなる燃費改善のためのロングストローク化や軽量化のためのアルミ材料の採用と耐摩耗性を確保するための表面処理技術を採用し、従来と全く異なる発電に特化したロータリーエンジンを開発した点を評価した。

 

「余剰高さを最小化する国産初の段ボール箱封かん機の開発」
レンゴー(株)
プロス(株)

 

【選定理由】
 通販による販売が増加して商品の配送件数が増えている。一方、運送業者の残業規制強化および労働人口の減少により配送の効率化が求められている。配送用段ボール箱サイズを適正化することにより、より多くの荷物を1台の配送車で運ぶことが可能になり、配送の効率化が期待できる。本業績では段ボール箱の中の荷物高さを自動計測し、箱の四隅をカットし、折りたたんでサイズを自動調整する装置を開発した。箱の四隅をカットするための刃物は、切れ味が良い刃物だと刃物の動きどおりにカットされ、箱の四隅がこの動きと異なる場合、四隅に沿ったカットが行われない。刃物の切れ味を落とし、柔軟性のある材料の特性を硬度のある刃物で再現するために左右にスライドする機構を開発し、段ボールの四隅がガイドラインとなり、四隅に沿った切り方が出来るようにしている。また、測定した内部の商品高さに応じて、段ボールに折り目を付ける装置を開発し、任意の高さで段ボールを折って高さを調節できるようにした点を評価した。

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