機械振興協会 「第60回(令和7年度)機械振興賞受賞者」を決定
審査委員長特別賞(研究開発)
「人の触感を数値化する評価装置の開発」
(株)トリニティーラボ
(大)山形大学
(地独)東京都立産業技術研究センター

【選定理由】
人の触感を数値化することは、製品表面のさわり心地やクリームなどを塗布した肌の触感変化などを定量的に評価するために重要となる。触感に近いものとして摩擦力測定が挙げられるが、一定の速度で接触子を動かして測定する摩擦力測定とは異なり、指や手の動きの速度変化に伴う摩擦力の変化や測定物の形状変化などを総合的に評価する必要がある。本業績では接触子を正弦運動させ、その際の摩擦力の変化によって触感を評価する方法を採用した。また、人の触感を正確に測定するために、人の指紋を模倣した接触子を開発し、これに取り付けるための高感度なロードセル(力センサー)も開発した。また、指でこする動きを安定させるために正確な正弦運動を実現するスコッチヨーク機構を改良した揺動システムを開発した点を評価した。
奨励賞(研究開発)〈50音順〉
「気流の動きを可視化する超多点風速分布計測システム」
KOA(株)
【選定理由】
空調機等の気流測定に使われる多点風速計測システムは高価で、測定点が多くなると配線の本数も多くなる欠点があった。また、単独の風速計を移動させて複数箇所の風速測定を行って代用する方法では、再現性が低く測定に多くの時間を要した。本業績では、安価な熱式風速計を数珠繋ぎにすることで配線をし易くし、最大4,500個の同時接続を可能とし、風速に応じてLEDの色を変化させることで、気流を視覚的に把握可能とした。配線を数珠繋ぎにすることで、各センサーへの指令とデータの受け渡しが同じ配線で行われることになり、通信に時間を要することになるが、指令とデータの受け渡しを工夫することにより、各センサーの測定タイミングを揃える方法を開発し、多数のポイントの風速を同じタイミングで計測できるようにしている。
「CFRP異形パイプ成形用簡易自動巻き付け装置」
田中技研(株)
【選定理由】
CFRPパイプの自動巻き上げ装置は、2枚の板でCFRPシートを丸パイプに押し当てながら接着するため、2枚の板の間で転がることができる丸パイプしか作成することができなかった。しかし、丸パイプは部品を取り付ける際に部品が安定しにくいこともあり、異形パイプ対応可能な巻き上げ装置の開発が望まれていた。本業績ではパイプへの押し当てを板ではなく、エアーシリンダーに取り付けたガイドローラーで行う方法を開発した。これにより異形パイプの形状に追従しながらローラーがCFRPシートを異形パイプに押し当てられるようになり、様々な形状のCFRPパイプを作成できるようになった。また、従来は手作業で巻き付けを行わなくてはならなかった長尺の異形パイプを作成できるようになった。
「油の漏洩リスクがない環境にやさしい機械を実現する水圧パワーユニット」
廣瀬バルブ工業(株)
【選定理由】
水圧式パワーユニットは油圧に比べ、漏れが発生した時の環境汚染リスクが低い。一方で水は粘度が低く、わずかな隙間でも漏れが生じ出力低下を招く。油圧では円筒内を円柱が移動して流路を切り替えるスプール弁が用いられるが、水圧では漏れが発生し易いため、低圧のシステムにしか利用できなかった。本業績では水圧式パワーユニットにスプール弁ではなく、気密性の高いポペット弁を採用した。ポペット弁は弁体に水圧がかかる構造のため、高圧下では弁の開閉が難しくなり、弁体と弁座の形状精度も求められる。同社はストップ弁のトップメーカーであり、ストップ弁にはポペット弁が使用されている。ストップ弁で培ったノウハウを水圧パワーユニットに用いて浄水場の水門など大きな力を要する場所でも、水漏れを発生せず環境汚染の心配がない水圧パワーユニットを開発した。
「フレキシブルデバイス向け耐久試験機の開発」
ユアサシステム機器(株)
【選定理由】
近年では大画面の表示パネルを折りたたむことでコンパクトに収納できるフォルダブルディスプレイを搭載した携帯電話が普及している。しかし、繰り返し折りたたむことでディスプレイが破損する可能性があるため、十分な折り畳み耐久性能があるか試験を行う必要がある。その際に、ディスプレイの折り畳み方向のみに力を加えて、余分な力を加えないことが求められる。本業績では、特殊な2重ヒンジ機構を用いて表示パネルに余分な張力を与えない折り畳み試験方法を開発し、折り曲げ信頼性の定量化を実現した。また、ディスプレイを厚さ方向から折り畳み中心を動画撮影し、破損に至る過程を記録するとともに、画像解析によって曲率の算出、歪み量への換算を行えるようにし、破損の検出もできるようになった。これにより昼夜を問わず長時間連続運転可能な耐久試験機を世界に先駆けて開発した。


