主戦場は準ハイエンドへ ~「TMTS2026」に見る日台の競争軸~
「ライン提案」が主流に、準ハイエンド機で存在感
会場で目立ったのは、展示内容の変化だ。これまでは加工精度や剛性といった、機械単体のスペックが前面に出ていたが、今回は①ロボットと連携した自動化セル ②工程間データの連携③ 稼働監視や予知保全――など、生産ライン単位での提案が中心となった。来場者に対しても「どの程度の精度が出るか」ではなく、「どれだけ生産効率が上がるか」を示す説明が増えた。
5軸加工機や複合加工機といった準ハイエンド分野では、台湾メーカー各社の積極的な展示が目立った。加工精度や耐久性では日本製に優位性があるとされるが、台湾勢は価格や納期、仕様対応の柔軟さで国際市場での評価を高めている。電気自動車(EV)関連や一般機械部品など、スピードとコストが重視される分野で採用が進む。ある来場者は日本と台湾の工作機械について「台湾製の価格面の優位さはあまり感じなくなったが、導入までの速さが違う」と話す。
台湾の強みである工作機器や部品産業の集積も健在だ。直動部品、ボールねじ、スピンドル、工具などのメーカーが多数出展し、完成機メーカーとの密接な連携がうかがえた。短期間で顧客仕様に合わせた構成を組める点が、競争力につながっている。日本人来場者も、機器メーカーの小間で多く見かけた。
東台とYCMが提携
今回のTMTSで最も注目されたのが、「Tongtai」ブランドの東台精機と「YCM」ブランドの永進機械の、初の共同出展だ。東台は上場しているものの、両社は同族色の強いファミリー企業でもある。両社は昨年5月に提携を発表し、相互に10%の株式を持ち合い、重複製品の見直しや共同での研究開発で合意したと発表した。今年はさらに一歩踏み出し、両社の製品を相互に販売し合い、その販売数にまで踏み込むなど、販売面での協業を深める考えだ。今後は機器や資材の共同調達、さらに共同開発まで視野に入れる。今回展は提携後初の大規模な展示会で、初の共同出展だった。
東台と傘下のグループメーカーは自動化ラインや、航空とEV向けの生産システムの構築に強みを持ち、永進は高精度マシニングセンタ(MC)で実績がある。永進は自社工場内に鋳物工場を持つ。両社は販売拠点も、中国以外ではほぼ重複しない。両社の協業は、加工精度とシステム提案を組み合わせ、より上位市場を狙う動きと受け止められている。
複数のメーカーで企業グループを構成する「FFG」ブランドの友嘉グループを除けば、完成機メーカーの売上高1位の東台と3位の永進の提携に、工作機械と周辺機器の各メーカーは動向を注視する。台湾企業同士が機能補完で競争力を高める事例として、業界内で関心を集める。こうした動きは、今後他社を巻き込んだ合従連衡の動きにつながる可能性を秘める。
東台と永進の提携は、台湾の工作機械メーカー各社が持つ、危機感の表れとも言える。技術力と生産性を高めた中国メーカーの追い上げで、台湾メーカーが強みとしてきた、市場のボリュームゾーンでもあるミドルレンジ市場での台湾製工作機械の存在感が薄まりつつある。台湾の工作機械業界の最大の輸出先は、今も中国だ。現地メーカーがひしめく中国での存在感が弱まれば縮小を余儀なくされ、中国に代わる市場を攻めるしかない。
こうした市場動向を無視できないと判断した台湾勢が狙うのが経済発展に勢いを増すインド市場であり、日本の自動車メーカー各社が生産拠点を持つタイやフィリピン、マレーシア、インドネシアであり、欧州の自動車メーカー各社が工場を持つ、ルーマニアやポーランドといった旧東欧の国々だ。
加えて、日本の中堅工作機械メーカー各社がひしめく準ハイエンド市場に目をつけるのは当然の流れだ。東台とYCMの提携は、いわば日本の中堅工作機械メーカーへの宣戦布告とも言える。東台は既に、日本国内に販売会社を持つ。
会場では、超精密加工設備製造連盟(SPEMA+) として、徳大機械(detron)、福裕事業(CHEVALIER)、徠通科技(Accutex)、大光長栄機械(PALMARY)、福碩科技実業(FOCUS CNC)、百徳機械(Quaser)の6社が共同で出展した。SPEMA+は半導体製造装置部品の製造で受注実績があるという。こうした取り組みが、新たな提携や協業、果ては企業合併や統合を生む下地となる可能性も秘める。



