「昨日より今日、今日より明日へ」 和井田製作所 和井田会長兼社長に聞く

 

機械を止めるな! 硬脆材料を制する研削盤の核心 ~グローバルニッチトップ企業からグローバルエクセレントカンパニーへ~

デジタルプロファイル研削盤「SPG-XV」は、高精度デジタル投影機機を搭載。CADデータの直接取り込み、チャートプロッターによる作図が不要なうえ、豊富なソフトによりトータル加工時間の短縮を実現する

 

超精密ジグ研削盤「SJG-L1]は超高精度丸穴加工を突き詰めるジグ研削盤の最上位機種

 ―貴社は硬脆材料を中心とした高精度加工を具現化する精密機械技術に高い評価を得ています。
 和井田 主力は切削工具用と精密金型用の研削盤ですが、当社の機械は超硬合金やセラミックス、PCDといった硬脆材料を対象にミクロンからナノメートル単位の精度で仕上げることができます。こうした材料は切削ではなく研削によって最終精度を出すケースが多く、加工時の熱変位や微小な振動、さらには砥石とワークのわずかな当たり方ひとつで品質が大きく左右されます。機械は剛性や熱安定性、制御技術、さらには加工条件の最適化まで含めた〝総合力〟が問われるものなので、最近では、こうした技術を応用して、半導体ウエハーの研削分野にも一部展開しています。平坦度や表面粗さが極めて厳しく求められる領域であり、ここでも当社の技術が生きています。特殊研削盤分野は他の機械からみても特化していることもあり世界的に見ても競合は限られています。市場規模も決して大きくありませんので、大手メーカーが簡単に参入してこない領域です。また、長期にわたる機械の安定性も強みのひとつ。実際に、10年、20年、場合によっては50年も現場で使っているお客様もおられます。この〝精度が落ちない〟、〝長く使える〟、という信頼こそ、私たちの宝です。
 

全自動5軸複合インサート研削盤「APX-F50」。従来機では不可能な複雑形状の加工に対応している

 ― DXの進展や市場環境の不透明さが増していますが、お客様の要求そのものも変化しているのではないでしょうか。引き合いの質は、以前と比べて変わってきたように感じますか。
 和井田 当社が身を置くニッチ市場においても確実に起きている変化があります。それが人手不足を背景とした自動化・無人化ニーズの急拡大です。製造現場では、熟練者の減少や労働人口の縮小が進み、これまで人の技能で支えてきた領域を、いかに機械で代替していくかが大きなテーマになっています。その結果、従来のような〝機械単体の性能〟だけでなく、〝工程全体を最適化するソリューションへの要求〟へと、変わってきていると感じています。ただし、その中で決して変わらない本質は、ラインの中核を担う機械は、〝止まってはならない〟ということです。安定して動き続けること、故障しないこと、そしてチョコ停を起こさないこと。自動化が進めば進むほど、一台の停止がライン全体に影響を及ぼす可能性がありますから、高品質・高精度であることは、絶対に外せない要素になります。いくら自動化が叫ばれても、この根幹の品質を犠牲にすることは許されません。むしろ、そこをどこまで高いレベルで実現できるかが、機械メーカーの真価であり、この領域こそが、これからの主戦場となり、勢いを増す中国勢との本質的な戦いだと考えています。
 ― 高い品質を持つ機械を安定して再現し続けるというのは非常に難易度が高いことだと思います。機械の剛性や熱安定性、加工や組立、検査に至るまで多くの要素が絡みますが、その難しさをどのように捉えていますか。
 和井田 サブミクロンからナノレベルの精度領域になると経験値や理論値だけでは成立しない世界に入ってきます。生産ラインに入る同じ機械が、例えば10台あったとして、それぞれの性能がバラバラでは現場は成り立ちません。金太郎飴のように、どこを切っても同じものが出てくるように、一台ごとの差を極限までなくし、同じ精度を安定して出し続けることが求められます。そのためには、細部にまで目を光らせる必要があります。例えば、ケーブル配線の取り回しやチューブの配置。見た目にはわずかな違いでも、動作中の応力や接続部の寿命に影響し、長期的な信頼性を左右することがあります。実際、機械は稼働中にケーブルやチューブも繰り返し動くため、本来10年持つべき部品が、条件次第では5年で劣化・断線することも起こり得ます。だからこそ、出荷前の検査には一切の妥協を許しません。精度だけでなく、長期にわたる安定稼働まで見据えて徹底的に確認します。
 ― この実直な姿勢が多くの顧客に選ばれ続けている理由なのかもしれません。その点についてどのようにお考えでしょうか。
 和井田 指名される理由は大きく2つあります。先ほど申し上げましたが、1つは摺り合わせ技術。当社は創業93年、設立からでも80年になります。この間、戦後から積み重ねてきた摺り合わせの技術と技能は、長い年月をかけて磨かれてきました。どれだけ当社の機械が長く安定して使えるか、という部分は、時間を経過して初めて評価されるものと思います。そうした実績を通して当時の設計や作り込みが正しかったのかを検証し続けてきました。とりわけ研削盤においては、この摺り合わせ技術こそが、長期間にわたって精度を維持し続けるための最も重要な要素だと考えています。当社は少なくても50年、70年というスパンでの実績と経験を積み重ねてきたからこそ、長期的な信頼性について自信を持ってお客様に説明することができます。この〝時間で証明された技術〟こそ、当社が選ばれ続けている大きな理由であり、企業として存続してきた強みだと考えます。もう1つは、これまでも繰り返し申し上げている〝お客様との直接対話〟です。お客様のニーズに本当に合った機械を提供できるかは、これに尽きると考えています。近年はオンラインでの打ち合わせも一般的になりました。確かに会話自体は成立しますが、画面越しでは、その場の空気感や微妙なニュアンスまでは伝わりきれません。実際に私が定期的に世界中を飛び回っているのも、そのためです。現在、海外拠点の欧州、米国、中国の体制強化を実施しており、100周年を迎えたときにはグローバルニッチトップからグローバルエクセレントカンパニーを目指して100億円企業になることを目指しています。
 ― 現在、産業トレンドに乗っている貴社の一押しマシンについて教えてください。
 和井田 精密金型用ハイエンド研削盤となります。この分野は今後も確実に需要が見込まれる領域であり、さらに強化していく考えです。現在、熟練技術者が減少している中でも、AI半導体、データセンター等の拡大に伴い、精密金型に求められる精度は一段と厳しさを増しています。微細化・高機能化が進む中で、従来以上に高度な研削技術が不可欠になっています。こうした領域では、最終的な形状精度や面品位を決めるのは研削工程です。その一方で製造拠点の変動も起きています。これまで精密金型分野は中国へのシフトが続いてきましたが、足元ではその一部が他国へと移り始めています。人件費や地政学リスクを背景に、サプライチェーンの再構築が進んでいるのです。だからこそ、当社のデジタルプロファイル研削盤やレンズ金型向けジグ研削盤といった超精密機が必要とされる見込みです。市場が動くと同時に求められる精度はさらに高まる。この変化を確実に捉え、成長領域を攻めていくことが当社の戦略です。
 

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