【レポート】DMG森精機 工程集約で工作機械の価値を最大化 伊賀事業所でMX戦略を公開!
MXが変えた製造現場 スマートファクトリー最前線

下川副社長の説明のあと、徳間 耕 製造 統括部長の案内のもと、第1組立工場、第2精密加工工場、ボールねじ工場を見学した。
第1組立工場では、精度検査工程のデジタル化への取り組みを見学。同社では従来、てこ式ダイヤルゲージによる測定を行っていたが、目視で数値を読み取り記録するため、読み間違いや記入ミスが発生する可能性があった。
現在は、デジタルツール「Tulip(チューリップ)」を導入し、グループ会社であるマグネスケール製のデジタルゲージと連携。測定値は人を介することなく自動でパソコンへ取り込まれるため、読み間違いや記入ミスを防止できるようになっている。さらに、「Tulip」が測定結果の合否判定まで行うため、経験や勘に頼らない安定した品質管理を実現。信頼性と安全性の向上につながっている。
「Tulipが合否判定まで行うため、誤って出荷限度値を超えた製品を出荷することはありません」と説明。なお、横形マシニングセンタでは、精度検査41項目のうち38項目を自動計測しており、自動化率は約92%に達しているという。
工場内をさらに進むと、高い静的・動的・空間精度を実現する5軸制御横形マシニングセンタや大型複合加工機が並んでいた。
高精度な工作機械は、温度変化や振動など環境の影響をできるだけ受けない状態で組み立てる必要があるため、生産ライン化が難しいとされる。例えば、一度ベッドを据え付けると、その場所で複数の作業者が工程を引き継ぎながら組立を進めることになるため、各機械の進捗状況を把握しにくいという課題があった。
そこで同社では、作業者全員にiPhoneやiPadを配布し、QRコードによる着手・完了登録を実施。各工程の進捗状況をモニタ上でリアルタイムに把握できる仕組みを構築している。
複合加工機のエリアでは、ロボットアームが素材を機内へ搬送し、加工後の完成品を取り出す自動化システムも見学。徳間部長は、「当社の複合加工機は高い加工能力を備えながらコンパクトな設計となっており、お客様は限られた設置スペースでも加工領域を大きく確保できる点が強みです」と説明した。
続いて見学した第2精密加工工場では、MXを体現する工場づくりを進めている。ちなみに同社の精密加工工場は、従来の専用機を工程集約機へ順次置き換えた結果、349台あった設備は現在43台となり、約88%の工程集約を実現。工場面積も約53%削減され、159人必要だったオペレータは現在51人だ。
工作機械の性能を左右する重要部品であるボールねじの製造現場も見学した。同社では約100種類、月産約1,100本のボールねじを生産している。従来は5工程に分かれていた製造工程を、自社設備によって1工程へ集約し、生産効率を大幅に高めている。ここではボールねじとナットを加工して、組み付けし、ラインに供給するという流れ。
ここではプログラミングの知識が不要なモジュール式ロボットシステム「MATRIS」と、自動走行型ロボット「WH-AMR10」の第2世代モデル「WH-AMR10 2nd Generation」を繋いで稼働率を上げていた。「MATRIS」は、シンプルな操作画面でシステムの段取り替えが可能になるもので、一方、「WH-AMR10 2nd Generation」は、離れた場所に設置された複数の工作機械をつなぐ自動搬送に加え、形状の異なるさまざまなワークの搬送にも対応。ワークの脱着作業を自動化することで、省人化や夜間の無人運転を実現している。なお、今回バージョンアップした「WH-AMR10 2nd Generation」は、同日、発売されたホカホカの新製品。搬送精度と搬送速度をさらに向上させた点が大きな特徴だ。高性能なビジョンシステムを搭載し、アーム先端の位置決め精度は±0.5mmを実現。さらにバッテリ性能も刷新され、従来機比3.6倍となる6時間以上の連続稼働が可能になった。ケーブルレス設計のためレイアウト変更にも柔軟に対応でき、高いフレキシビリティを備えている。
こうした自社工場で培った自動化技術やデジタル技術は、スマートファクトリー構築のノウハウとして顧客にも展開している。加工技術や治具、工具、プログラムまで含めたワンストップ提案ができることも、同社ならではの大きな強みといえる。
この日は特別対談も行われ、「不確実性の時代に製造業はなにを〝信じて〟変革すべきか ~技術・人・経営をつなぐラディカル・トランスフォーメーション~」をテーマに、森社長と製造業コンサルタントのPeter Hill氏が登壇した。
対談では、不確実性が高まる時代に経営者が果たすべき責任や、抜本的な変革と日々の事業運営をいかに両立させるかなどについて活発な議論が交わされた。会場では熱心にメモを取る聴講者の姿が多く見られ、その一言一句に耳を傾ける様子からも、製造業が大きな転換点を迎えるなか、未来への指針を求める参加者の高い関心がうかがえた。


