【小杉取締役に聞く】成長市場を加工技術の足元から支えるユキワ精工
掴む・回す・運ぶ」で成長市場を支える
では、高度化する加工ニーズに対し、同社では具体的にどのような製品で応えていくのか。
足元では生成AIの急速な普及を背景に、AIサーバーやデータセンター向けの需要が半導体市場を押し上げている。日本半導体製造装置協会(SEAJ)は、日本製半導体製造装置の2026年度販売額について、DRAM投資の拡大やAIサーバー向け先端ロジックの成長などを背景に、前年度比12%増の5兆5,000億円に達すると予測している。
一方、中国ではAIとロボット技術を融合した「具身知能(Embodied AI)」への取り組みが加速し、ヒューマノイドロボットの開発・量産化に向けた動きが活発化している。製造現場への本格普及はこれからという段階にあるものの、ロボット本体だけでなく、その構成部品を高精度かつ効率よく生産する加工技術にも新たな需要が生まれる可能性がある。
こうした市場の変化を小杉取締役も捉え、次のように述べた。
「製造業ではAIの急速な普及を背景に、データセンター向け半導体製造装置をはじめとする先端分野への設備投資が拡大しています。また、中国市場ではヒューマノイドロボット関連産業への投資も活発化するなど、高精度・高効率な加工技術へのニーズが世界的に高まっています」
こうしたニーズに応えるのが、同社が長年培ってきたチャッキング技術を生かした製品群だ。
「当社では、ツールホルダ、コレットチャック、ワークハンドリングホルダ、CNC円テーブルなど、工作機械の周辺機器を幅広く提供しています。〝掴む〟〝回す〟〝運ぶ〟という加工工程を支える製品群を通じて、高精度化、自動化、省人化、生産性向上に貢献し、お客様のものづくりを支えていきます」と力を込める。
工作機械や切削工具そのものが加工の主役だとすれば、それらの能力を引き出し、ワークや工具を正確に「掴む」、必要な位置へ精度よく「回す」、次の工程へ確実に「運ぶ」技術は、生産工程を成立させるために欠かせない。加工精度と生産性の両立に加え、自動化・省人化への要求が強まるほど、こうした周辺機器の担う役割も大きくなる。
「加工の改善」から「生産体制の改善」へ
市場の変化とともに、小杉取締役は営業の最前線で、ユーザーから寄せられる相談内容そのものにも変化を感じているという。
これまで加工現場では、加工精度の向上や工具の長寿命化、サイクルタイムの短縮など、個々の加工工程をいかに改善するかが重要なテーマとなってきた。こうした要求がなくなったわけではないが、人手不足や熟練技能者の減少を背景に、現在では一つの加工を改善するだけでなく、限られた人員でいかに生産を維持・拡大するかという、工場全体の生産体制を見据えた課題へとユーザーの関心が広がっている。
「以前は、より良い加工精度や工具寿命の向上といった個別の改善要求が中心でした。しかし現在では、人手不足や熟練技能者不足への対応、自動化による生産性向上、夜間無人運転の実現、さらには安定した品質の確保といった、工場全体の生産体制を見据えたご相談をいただくことが増えています」と小杉取締役。
人が常時介在しなくても、工具やワークを確実に保持し、決められた位置へ高精度に位置決めし、長時間にわたって安定した加工を継続できる仕組みが求められる。熟練者が経験や勘によって補ってきた作業を設備側で安定して再現するという意味でも、加工を支える周辺機器の信頼性はこれまで以上に重要になる。
顧客が求めるものは、「より良く削る」ための個別改善から、「少ない人員でも、安定した品質で生産を続けられる」生産体制づくりへ――。
これらのニーズの変化は、ユキワ精工が掲げる「掴む・回す・運ぶ」という技術の役割をさらに広げつつある。


