あれじゃ穴はあきません!(断言)

TV番組で穴があかないほど硬い超硬合金に穴をあけよう・・・という趣旨のテレビ番組を観た。この企画は好評なのか先日は前回に引き続き、別の企業が挑戦していた。

これでも一応、長年、女だてらに魑魅魍魎の業界紙&誌(←時流によりWEBに移行)の記者をやってる私。

え? 何年この稼業をやってるか・・・ですって?

知りたい? 

いや~よ、教えないわ。どうせ逆算して年齢を当てようって魂胆ね。
でも長いことはたしかよ。永遠の28歳だけど・・・ふふ。

ところで、昨日の番組は正直、解せなかったわ。

ああいう番組は面白いけれど、せめて硬度の説明や解説をしてほしいわ。検証なしでは、「あー超硬合金すごいわねぇ」で終わっちゃって、国民に間違った概念を植え付ける可能性があるものね。いくらバラエティだとしてもこの手の番組は少しぐらいシリアスな面があってもいいんじゃないかしら。“誰にでも分かる”ような双方の技術論理を聞きたかったわ。

だって、ものづくりの国の人だもの―――――

超硬合金のウィークポイント(振動に若干弱い面がある)を突いたとしても、トンネルを掘るドリルで超硬に穴を明けるのは無理よ、無理。あんなにドリルがアル中患者の手のようにブリブリ振れているんですもの、これじゃあどんなに良い工具を使ったとしてもすぐに刃が摩耗しちゃってイカれちゃうわよ。

非常に硬い材料の成分や特性もわからないまま、闇雲にトライしている印象があったわ。これがモヤモヤの原因よ。

だけど、どうやったらあの超硬合金に穴があくかしら?

と、今までたくさん機械や工具メーカーを取材している私なりに考えてみた。

まぁ、単純に考えてこの世で一番硬い材料はダイヤモンドよね。
硬いモノを早く削れば摩擦で切削熱は上がる。ダイヤモンドの弱点は熱に弱いことだけど、ここは油をぶゎーっとかけて切削すればいいのか・・・ということで、やっぱりダイヤモンド・コーティングを施した工具が適しているのかな。DLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)複合膜コーティングとかね。以前取材したんだけれど、DLCにナノカラム構造を導入してしなやかに変形する膜にしたところ、膜厚方向に強靭なネットワークをもった「竹状」の膜ができた。この被膜は過酷な摩耗条件でも強靭な威力を発揮した・・・っていうのがあったなあ。

これは一例だけど、各社がしのぎを削ってコーディングの開発をしているわ。先述のとおり粒子を操作したりして母材に対する高い密着性と優れた耐摩耗性、耐熱性などなど、そりゃあ涙ぐましい努力をしているわけなのね。ほんとは一社一社の特長を書き込みたいくらいだけど、ここではやめとくわ。

ところで、工具の寿命を延ばすためのコーティング性能を発揮するためには刃物形状も重要ね。工具に問われているのは母材、形状、コーティングの総合力よ!

工具ばかり話がいっちゃったけれど、本当にあの硬い超硬合金に穴をあけるのであれば、切削条件を整えなければならないわ。それには工具メーカーだけじゃ困難ね。

剛性のある工作機械も必要だわ!
機械が振動すると良くないし、もちろん高性能スピンドルも必要。機械と工具の狭間で重要な役割を密かに果たしているチャックも優れモノでなければいけないわ。

とにかくあの超硬合金に穴をあけるには、設備の総合力で挑まなければならないの! 

実は、材料の特性に合わせて「このメーカーのこれと、これを使いなさい」って、ご指名チョイスをしたらあの超硬合金に穴があくかもしれない・・・と密かに睨んでる私です。