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ヤマザキマザック ミネラルキャストを自社で内製、採用機種を拡大

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米国生産機に採用しているミネラルキャスト

 

 ヤマザキマザックは、このほど優れた振動減衰性能など工作機械の高精度化に有効な素材であるミネラルキャストを内製し、自社製の工作機械への採用を拡大していくと発表した。

 ミネラルキャストは鉱石とエポキシ樹脂で結合させた複合素材で、高い振動減衰性能や熱安定性を有し、工作機械の高能率化・高精度化に貢献するもの。工作機械は「マザーマシン」と呼ばれ、自動車、航空機、半導体など、あらゆる産業のものづくりに関わっており、常に加工精度や生産性の向上が求められている。

 工作機械の加工精度や生産性は、機械構造体の剛性や振動減衰性能に依存するため、その構造体に使用する素材は重要であり、工作機械の構造体には鋳物を使用することが一般的だが、昨今はさらなる性能向上のために、より優れた特性を持つ代替素材のニーズが高まっている。

 ミネラルキャストはその一つとなり、素材として優れた特性を持つだけでなく、製造工程におけるCO2排出量が鋳物に対して大幅に少ないことや、安全でクリーンな環境で製造が可能であるなど環境性能も優れている。また、あらかじめ配管やタップインサートをミネラルキャスト内に鋳込む(組み込む)ことができるなど設計の自由度が高く、機械加工や組立工数を削減し製造リードタイムを短縮することができるなどのメリットもある。

 このように優れた特性やメリットがある一方で、特に日本国内では製造メーカーが限定されており、輸送費を含めた調達コストが鋳物に比べて割高であることが、工作機械に積極的に採用することへの課題の一つとなっていた。こうしたことから、同社では、高精度で生産性の高い工作機械を短納期で顧客に提供することや、またCO2削減など環境経営の一環として、同社ではミネラルキャストを自社で内製化・採用拡大に向けて、数年前より試験研究をおこなっていた。本年度中に量産化に向けての技術開発を完了し、2024年度中に量産を開始、内製ミネラルキャストを採用した新機種の出荷を開始する予定。

ミネラルキャストの特長

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ミネラルキャストの製造には、適切な材料の選定・配合などの「材料の技術」、材料を均一に混ぜる「混合の技術」、複雑な形状の型枠に隙間なく流し込む「注入の技術」などのノウハウが必要

 

(1)高い振動減衰性
 振動減衰性とは、振動をどれだけ短時間で収束させることができるかという指標。ミネラルキャストは、鋳鉄と比較して約10倍(素材サンプルを使用した同社試験結果)の振動減衰性能に優れており、工作機械の稼働時に発生する振動をより早く吸収し、加工精度の向上や工具の長寿命化に貢献する。

(2)優れた熱安定性
 ミネラルキャストは熱伝導率が鋳鉄の約25分の1、比熱が高いため、温度変化に強い工作機械の構造体を作ることができる。

(3)環境負荷の低減
 ミネラルキャストの製造には鋳物のような高温溶融処理が不要であり、製造時のエネルギー消費量を大幅に低減することが可能であり、CO2排出量の削減(製造工程におけるCO2排出量は鋳物に対し約8割減〈同社比〉)に大きく貢献する。また、製造時に数千℃の溶湯(ようとう:金属を高温にして溶解し液体状態にしたもの)を扱う鋳造と比較し、ミネラルキャストの製造工程では高温の液体を扱う作業がないため、安全でクリーンな労働環境を実現する。

(4)製造リードタイム削減
 ミネラルキャストは注型から脱枠までの所要時間が約24時間と鋳物に比べて短く、製造リードタイムを短縮(鋳物に対して約6割短縮)することが可能。さらにタップインサートや金属部品、ホース、冷却部品などをあらかじめ内部に鋳込むことが可能であり、機械加工や組立加工など後工程の工数も削減、工作機械の短納期化に寄与する。

タンガロイ ヘッド交換式自動盤用工具「ModuMiniTurn」に背面加工用丸シャンクシリーズ登場

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 タンガロイは、このほどヘッド交換式自動盤用工具「ModuMiniTurn」シリーズに背面加工に対応可能な丸シャンクタイプを追加した。

 同シリーズは、独自のカップリングにより高い繰り返し精度を実現した自動盤用ヘッド交換式工具。ヘッド脱着時の繰り返し刃先位置の精度は5μm以下で、インサート交換や段取り替えによるダウンタイムを大幅に削減する。ヘッドのラインアップは前挽き用、後挽き用、溝入れ用からねじ切り、突切り、Y軸加工まで多岐にわたる。

 今回追加する丸シャンクシリーズは、自動盤の円筒シャンクホルダに対応する。丸シャンクでも「ModuMiniTurn」の特長である高い繰り返し刃先位置精度を備えているので、機械のダウンタイムの大幅削減を実現する。

■主な形番、標準価格(税抜)
・QR12D-SCLCL09-CHP:    41,200円
・QR12D-SDUXL07-CHP:41,200円
・QR12G-STCL18-CHP:51,800円
(計30アイテム)
 

日本能率協会「第12回 2024 GOOD FACTORY賞」決定

 日本能率協会会(JMA、会長:中村正己氏)は日本およびアジア地域に進出している製造業の生産性や品質の向上、改善活動に成果をあげた工場を表彰する「GOOD FACTORY賞」を2011年に創設し、優秀事例を紹介する活動を行っているが、このほど第12回の受賞企業として、旭化成、花王、東芝産業機器システム、トヨタ自動車、日産自動車、富士フ
イルムマニュファクチャリング、マツダ、リコー、リコーインダストリーの9社・9工場を決定したと発表した。

 「GOOD FACTORY賞」は、中国・アジア地域並びに日本国内工場の生産性向上、品質向上など体質革新活動に取り組んでいる事例に着目し、そのプロセスや成功要因、現場の知恵、労働者の意識改革、社会的貢献などの内容を日本製造業の範として顕彰するもの。優良工場の事例を産業界に広く紹介することで、製造業の体質強化と発展に寄与することが目的。

 なお、GOOD FACTORY賞審査委員会(委員長:東京工業大学 名誉教授 伊藤謙治 氏)の書類審査・現地審査を経て、選考している。

 

【年頭所感】「人、社会、地球が共に栄える未来を切り拓く」コマツ 代表取締役社長(兼)CEO 小川啓之

240118コマツ 小川社長 謹んで新年のご挨拶を申しあげます。

 昨年は、国内においてはコロナ禍からの本格的な経済回復が見られた一方で、経済安全保障リスクや地政学リスクの高まり、トルコ・シリア地震をはじめとするさまざまな災害発生など、グローバルでの当社を取り巻く外部環境は大きく変化し不確実性が高まった一年となりました。

 昨年の建設・鉱山機械の事業環境を振り返ると、一般建機は金利上昇、インフレの影響や一部の国での政情不安等により、欧州、アジア、中南米を中心に需要が減少したものの、北米においてはレンタル、インフラ、エネルギー関連向けが堅調に推移しました。また、鉱山機械の需要は資源価格がある程度のレベルを維持しており引き続き堅調に推移し、機械の高稼働による部品・サービス売上げも増加しました。各地域での販売価格の改善や為替の影響もあり、上期の業績は売上高・利益ともに過去最高となりました。

 本年は、世界経済の先行き不透明感による景気後退が懸念され、一般建機の需要が減速することが想定される一方で、鉱山機械の需要は引き続き堅調に推移することが見込まれます。このような状況のなか、本年4月には、3カ年の中期経営計画「DANTOTSU Value - Together, to “The Next” for sustainable growth」の最終年度を迎え、目標達成に向けた活動を着実に進めていきます。

 特に、当社はキーコンポーネントの自社開発・生産を強みとし、延長保証契約による純正部品の販売やコンポーネントの再生事業、Komtraxを活用したデータドリブンのビジネスモデル等によりバリューチェーンビジネスを強化することで、機械本体販売後の収益拡大を図り、需要変動などの環境変化に左右されにくい企業体質の構築に注力しています。また、2050年カーボンニュートラル実現に向け、バッテリー車、燃料電池車や水素エンジンなどの研究開発を進めるとともに、既に当社が実用化しているハイブリッド、ディーゼルエレクトリック、有線電動、トロリー給電などのブリッジテクノロジーの拡大にも継続的に取り組んでいます。

 昨年は、「電動化建機市場導入元年」として、0.5t~20tクラスの計4機種の電動化油圧ショベルを市場導入し、電動化市場の形成促進に努めました。本年からは、昨年買収した米国のバッテリーメーカーABS 社の技術や、様々なパートナーとの協業による知見を活用しながら、様々な出力、環境や稼働時間等の条件下で使用される建設・鉱山機械各機種に最適なカーボンニュートラルへのアプローチのために開発・生産体制を強化し、また、将来の電動化建機の市場形成時におけるコンポーネント戦略の検討も進めてまいります。

 コマツは今後も、「品質と信頼性の追求」と、当社の存在意義である「ものづくりと技術の革新」で新たな価値を創り、人、社会、地球が共に栄える未来を切り拓く」ことを目指してまいります。最後になりましたが、皆さまにとって素晴らしい1年になりますように、心より祈念いたします。

2023年11月分工作機械受注総額は1,159.0億円

 日本工作機械工業会がこのほどまとめた2023年11月分の受注実績は以下の通り。

 2023年11月分工作機械受注総額は、1,159.0億円(前月比+3.4% 前年同月比△13.6%)となった。受注総額は、前月比増加も2カ月連続の1,200億円割れ。内外需とも調整局面が続く。1,000億円超は34カ月連続。

 内需は327.0億円(前月比△2.8% 前年同月比△28.4%)で、2カ月連続の350億円割れ。前年同月比も3割近い減少と勢いが弱く、全般的に調整局面が継続。

 外需は832.0億円(前月比△+6.1% 前年同月比△6.0%)で、アジアと欧州で前月比増加し、2カ月ぶりの800億円超。アメリカ、ドイツ等は高水準の受注が続き、中国も底堅い動き。

 11月の受注は外需が下支えする形となったが、受注状況に大きな変化は見られておらず、今後の持ち直しの時期等、動向を注視。

11月分内需

 327.0億円(前月比△2.8% 前年同月比△28.4%)。

 ・2カ月連続の350億円割れ。
 ・前月比2カ月連続減少。前年同月比15カ月連続減少。
 ・内需は2カ月連続で本年最低額となり、緩やかな減少傾向が続く。

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(出所:日本工作機械工業会)

11月分外需

 832.0億円(前月比+6.1% 前年同月比△6.0%)

 ・2カ月ぶりの800億円超。
 ・前月比2カ月ぶり増加。前年同月比11カ月連続減少。
 ・主要3極はアジアと欧州が前月比増加し、北米も高水準を維持するなど堅調持続。

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(出所:日本工作機械工業会)

日本機械工具工業会 2023年11月分 会員統計生産額まとまる 

 日本機械工具工業会がこのほどまとめた2023年11月分の機械工具生産額は次のとおり。〈( )内は対前年比〉。

■生産額
 切削工具 360.1億円(92%)、耐摩耗工具 33.5億円(102%)、総合計 401.5億円(93%)。

■ドリル生産額
 特殊鋼工具 14.6億円(88%)、超硬工具 37.2億円(88%)、ダイヤ・CBN 1億円(106%)、総合計 52.8億円(88%)。

■エンドミル生産額
 特殊鋼工具 3.9億円(76%)、超硬工具 36.1億円(92%)、ダイヤ・CBN 1.5億円(108%)、総合計 41.5億円(91%)。

■カッタ生産額
 特殊鋼工具 0.7億円(94%)、超硬工具 5.5億円(96%)、ダイヤ・CBN 0.5億円(94%)、総合計 6.7億円(96%)。

■ギヤカッタ生産額
 総合計 6.8億円(89%)。

■ブローチ生産額
 総合計 7.2億円(92%)。

■ねじ加工工具生産額
 特殊鋼工具 34.9億円(95%)、超硬工具 3.2億円(82%)、総合計 38.1億円(94%)。

■バイト生産額
 特殊鋼工具 0.1億円(34%)、超硬工具 9億円(99%)、総合計 9.1億円(97%)。

■リーマ生産額
 特殊鋼工具 1.2億円(91%)、超硬工具 2.1億円(85%)、総合計 3.3億円(87%)。

■鋸刃カッタ生産額
 特殊鋼工具 1.3億円(100%)、超硬工具 0.5億円(73%)、総合計 1.8億円(91%)。

■インサート生産額
 超硬工具 142.1億円(93%)、ダイヤ・CBN 21.9億円(104%)、総合計 164.1億円(94%)。

■ボディ関係生産額
 総合計 16.6億円(93%)。

■超硬合金生産額
 切削用 118.2億円(79%)、耐摩耐触用 15.1億円(97%)、総合計 135.2億円(81%)。
 

日本建設機械工業会 2023年11月度出荷金額まとまる

 日本建設機械工業会がこのほどまとめた2023年11月度の出荷金額は次のとおり。

■概要(増減は前年同月比)
 11 月の建設機械出荷金額は、内需は4.1%増加の1,012 億円、外需は0.6%減少の2,212 億円となった。その結果、内需は17カ月連続の増加、外需は37カ月振りの減少となった。総合計では0.8%増加の3,224億円となり、37カ月連続の増加となった。

■内外需別(同上)
(1)内需

 機種別に見ると、トラクタは32.0%増加の179億円、ミニショベルは3.4%増加の79億円、建設用クレーンは16.4%増加の166億円、コンクリート機械は25.0%増加の24億円、油圧ブレーカ・圧砕機は6.6%増加の23億円の5機種が増加した。また、補給部品も4.6%増加の122億円となった。

(2)外需
 機種別に見ると、ミニショベルは21.7%増加の467億円、建設用クレーンは55.1%増加の135億円、道路機械は44.8%増加の45億円、その他建設機械は8.6%増加の316億円の4機種が増加したものの、他5機種と補給部品が減少した。地域別に見ると、北米が4カ月連続で増加したものの、欧州が16カ月ぶりに減少へ転じ、全9地域中5地域で減少した。
 

イワタツール、田野井製作所、トライエンジニアリングが合同記者会見を開催 ~最新技術を披露~

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イワタツール 岩田社長

 イワタツール(社長=岩田昌尚氏、本社:愛知県名古屋市守山区)、田野井製作所(社長=田野井優美氏、本社:埼玉県白岡市)、トライエンジニアリング(社長=片山誠二氏、本社:愛知県名古屋市守山区)が11月21日、トライエンジニアリング本社にて3社合同記者会見を開いた(オンライン併催)。

 まずイワタツールの岩田社長から海外法人の概況市況報告や、IWATA TOOL Vietnamの開設と新製品について説明があった。岩田社長はコロナ禍を振り返り、「様々な問題があったものの今年の春頃から工場の生産性などが改善してきた。また、弊社の大きな生産拠点のIWATA TOOL Thailand、IWATA TOOL Dalianも、非常にスムーズな生産ができるようになっている。」と改善に注力していたことを述べた。

 また、新製品のヘリカル穴加工用エンドミル「ドリミル」について開発の経緯を説明した。それによると、「最初はトライエンジニアリングのロボットによる板金加工の薄板の穴あけ加工用に開発した経緯があり板金加工に向いたメリットを感じたことがきっかけだったが、この製品はマシニングセンタ等の高速加工にも使えることが分かった。」と話し、特許申請中という。また、大きなメリットについては、「非常に加工速度を上げられること。すでに工作機械メーカーやユーザーにもテストをしており、驚くほど良い結果が出ている。」と自信をみせた。

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デモ加工の様子

 

 今回新たに開設したIWATA TOOL Vietnamについて説明があった。岩田社長は、「2023年初頭からベトナムの販売体制の構築に動いていた。縁あって国営企業のNEWTATCOと業務提携をするに至った。これはイワタツールの在庫管理、受注、等々国営の仕事を行うということだが、イワタツールの代理店ではなく、あくまでもIWATA TOOL Vietnamとして活動することになる。そこからそれぞれ代理店を設定して、ユーザーにものを供給していくというイワタツールの現地法人業務をこのNEWTATCOに委託する。」と話し、続けて「IWATA TOOL Vietnamは、ユーザーには直販はせず、世界中において代理店経由になる。」と強調した。

 IWATA TOOL Thailand、IWATA TOOL Dalian 、IWATA TOOL Europeにおける現況の説明があった。

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田野井製作所 田野井営業部次長

 続いて、田野井製作所の田野井営業部次長が、会社の概要を説明したあと、新製品について説明をした。

 今回は鋳鉄用に特化した「ゼロチップ」の新ラインナップ「ゼロチップタップ」を紹介。加工現場からは鋳物加工においては摩耗で工具寿命が短くなるなどの声を受け、鋳鉄専用設計・開発を行いリリースした。また、業界初となる〝さらい用の転造タップ〟について説明があった。

 続いてロボットSierのトライエンジニアリングの岡取締役が説明をした。同社は、近年、加工用とでのロボット適用を推進しており、ロボットマシニング、ロボットFSW、ロボットポリッシング、切削・研磨加工、摩擦熱で接合するといった製品展開を行っている。

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トライエンジニアリング 岡取締役

 今回は、ファナックM-800iC/60によるドリミル加工実演、ファナックR-2000iC/190Fによる面削穴あけ実演、安川電機MOTOMAN-GG250(市販予定機種)によるFSW加工実演、初披露となる安川電機MOTOMAN-GP25による研磨加工実演などが行われた。


 

イスカルジャパン 「2023 UTS(ユーザーテクニカルセミナー)」を開催 ~国内製造業の生産性向上に寄与~

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あいさつをする岡田代表

 イスカルジャパン(代表=岡田一成氏)が、去る11月22日、神戸テクニカルセンターにて製造現場の加工ユーザーを対象とした「2023UTS(ユーザーテクニカルセミナー)」を開催し、全国各地から約80名が参加した。同セミナーの開催はコロナ禍以来4年ぶりとなる。

 岡田代表は冒頭のあいさつで、「UTSは2004年の初開催以来、のべ約1300名以上のユーザー様にご参加頂いている。最大の目的は、国内製造業の生産性向上に寄与すること。製造現場での課題解決、収益性アップに貢献するためのアイデアやきっかけとなれば幸いである。」と語った。

 営業部からは、製造コスト診断サービスの『TDP(ツール・ドクター・プログラム)』及び製造現場のデジタル化に欠かせない『MATRIX』について説明があった。特にTDPについては、単なる既存工具の置き換えによる工具費の低減、寿命改善にとどまらず、機械の仕様、ワークの材質や形状、クランプ状況など、加工に関するあらゆる条件を考慮したうえで原価低減の提案を行うというから心強い。

 その後プロダクトマネージメント部より、高付加価値製品及び最新工具についての紹介があった。

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最新工具のデモ加工の様子

 続いて、参加ユーザーの中から8社が順に登壇し、同社製品によって、ボトルネック工程を改善し、生産性向上とコストダウンに繋がった事例の発表を行った。具体的な数値を交えた発表や同社技術部による解説などに、参加者は熱心に耳を傾けていた。その後、同施設内の工作機械を用いて、事例の発表で採用された工具を含む、独創的・優位性を誇る最新工具のデモ加工を行った。

 セミナー後は、ホテルへ会場を移し懇親会を開催。情報交換や交流が積極的に行われた。
参加者からは、「ユーザーが改善事例を発表するという、イスカル独自のセミナー形式で、
これまで自社に無かった発想や着眼点に気付くことができ、非常に参考になった」との声が多数上がり、宴もたけなわの頃散会した。

■UTS(ユーザーテクニカルセミナー)とは
 イスカル製品による課題解決事例をユーザーの視点で発表するセミナー。今回で15回目の開催となる。同社製品を通じた情報交換の場として毎年定期的に行っており、今後も継続していく。
 

【令和6年 年頭所感】経済産業省製造産業局/産業機械課

「成長と所得向上の好循環をさらに推進」
■経済産業省製造産業局
製造産業局長 伊吹英明

240101伊吹局長〈はじめに〉

 令和6年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 昨年は、これまで3年間続いた長いコロナ禍が収束に向かい、ポストコロナの社会・経済に活気が戻った一方で、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東紛争の激化など、我が国を取り巻く地政学リスクの厳しさが一段と増した年になりました。

 こうした中、日本経済は、これまでのコストカット型のデフレ経済から、持続的な賃上げや活発な投資でけん引する成長型経済への転換局面を迎えています。昨年、国内投資見通しは名目100兆円と、過去最高を更新したほか、実に30年ぶりとなる高水準での賃上げが実現されました。

 本年は、こうした成長軌道への変化を一過性のものにしないためにも、更なる投資の活発化と価格転嫁を促すことで、もう一段の賃上げを実現し、成長と所得向上の好循環をさらに進める一年にしたいと思います。

 その実現に当たって、政策の重点は、「GX(グリーントランスフォーメーション)」「DX(デジタルトランスフォーメーション)」「経済安全保障」の3軸による投資の促進だと考えています。本年も産業界の皆様と緊密に連携しつつ、この3つを政策軸として、我が国製造業の成長のために全力を尽くしてまいります。

〈GX〉

 昨年末のCOP28の成果文書では、「化石燃料からの移行を進める」という文言が盛り込まれるなど、一層の取組強化の必要性が確認されました。脱炭素の世界的な潮流は想像を超えて速く、産業界にも変革を迫る圧力は年々高まっており、官も民も一歩前に出た取組が求められています。

 世界各国では、米インフレ削減法やEUグリーンディール産業計画に代表されるように、したたかに自国に投資を誘導する投資促進策を加速させています。我が国は、エネルギー安定供給、産業競争力強化と排出削減の同時実現に向けて、昨年5月に「GX推進法」「GX脱炭素電源法」を成立させ、7月にはGX推進戦略を策定しました。その中では、「成長志向型カーボンプライシング構想」を掲げ、投資促進策と規制・制度の両輪で様々な施策を進めているところです。

 特に、排出削減に効果が大きく、我が国産業の競争力強化に資する取組のうち、企業だけで取組むには負担が大きいものには、官も前に出て支援していくこととしています。

 既に、脱炭素化に向けた研究開発・実証を支援している「グリーンイノベーション(GI)基金」では、水素還元製鉄技術や、CO2を用いたプラスチック、コンクリートの製造技術等を開発するプロジェクトを進めています。

 また、昨年末には、「分野別投資戦略」として鉄鋼、化学、紙パルプ、セメントといった”Hard-to-abate”産業、すなわち製造過程での排出削減が困難なセクターや、自動車、航空機等を含めた16分野でのGX実現に向けた方向性と投資促進策を策定し、今後、プロジェクトの具体化を進めることとしています。

 加えて、GXに関する取組のうち生産段階でのコストが大きい戦略分野の投資については、初期投資支援の他に、生産・販売量に応じたインセンティブを受けられる減税措置を新設しました。 

 GXの実現には、こうした投資促進策だけでなく、規制・制度による取組も重要です。カーボンプライシングにより炭素排出に価格を付け、GX関連製品・事業の付加価値を向上させる取り組みを進めます。また、多くの企業にご参画頂いているGXリーグにおいて、排出量取引を実施していくとともに、グリーン市場創造に向けたルールメイキングを進めております。

 また、GXだけでなくサーキュラーエコノミーの実現という観点から、金属、蓄電池材料、繊維などの分野で資源循環の取組も進めてまいります。

 こうした施策に基づき、国内にGX市場を確立し、サプライチェーンをGX型に革新するなど、GX実現に向けた取組を政府としても後押ししてまいります。

 自動車業界でもカーボンニュートラルの実現が大きな課題となっていますが、足下では「EVシフトの加速」と「中国の台頭」という2つの潮流が状況を大きく変えています。我が国は、EVに加えて水素、合成燃料など「多様な選択肢」によってカーボンニュートラルを実現する方針ですが、その中でも日系メーカーが「EVでも勝てる」競争力を獲得することが重要です。EVにとってコアな技術である蓄電池やモーターをはじめとしたe-Axleの開発や投資への支援、EV等の生産・販売量に応じた減税措置、国内のEV市場の立ち上げに向けた電動車の購入補助や充電インフラの整備など、総合的に取り組んでまいります。

〈経済安全保障〉

 GXと並び世界的な課題となっているのが経済安全保障です。資源に制約のある我が国は、従来より米中をはじめとする諸外国と活発な貿易関係を築くことで経済発展を進めてきました。しかしながら、米中の厳しい対峙、コロナ危機、ロシアによるウクライナ侵略など国際情勢が厳しさを増す中で、サプライチェーン上のリスクが顕在化しており、改めて日本の国際的な立ち位置を確認しながら経済安全保障の取り組みを進めなければなりません。

 政府としては、特定の国や地域に過度に依存しない、自立性の高い経済構造を実現すると同時に、研究開発強化等による技術・産業競争力の向上や技術流出の防止により優位性を確保するため、産業界との対話・協力の下、あらゆる施策を総動員して取組を進めてまいります。

 具体的には、「経済安全保障推進法」に基づき指定した11の「特定重要物資」のうち、製造業の関連では、永久磁石や工作機械・産業用ロボット、航空機の部品、半導体素材などの我が国の生産基盤を支える物資について、安定供給の確保に資する民間企業の設備投資や、これらに不可欠な重要鉱物の備蓄、研究開発の取組を後押ししてまいります。

 また、2022年から始まった経済安全保障重要技術育成プログラムを活用し、宇宙・航空、海洋、サイバー等特定の先端的な重要技術について官民による研究開発を推進していきます。

〈DX〉

 GXや経済安全保障の課題に対応するに当たり、また、企業の競争力の基盤という意味でも、デジタル化への対応は不可避です。デジタルによる既存のビジネスモデルの変革や、生成AIの登場による付加価値の源泉の変化など、DXによる産業構造の変化を捉え、先を見据えて手を打っていくことが求められています。

 政府としては、デジタル社会の基盤を支え、GXや経済安保の観点からも重要な物資である半導体・蓄電池の投資に対して、大胆な政策措置を講じてきました。こうした支援に加え、国民生活や経済社会を支えるデジタル時代の社会インフラ、すなわち、「デジタルライフライン」の整備についても取り組んでいます。移動・物流課題の解決手法とすべく、「レベル4」の自動運転技術を活用したサービスの実現に向け、自動運転タクシー・トラックの社会実装を支援していきます。

 さらに、我が国製造業の競争力強化に向けて、DX投資を後押します。DX投資促進税制等の既存の政策に加えて、経営課題に立脚した、自社にとっての最適なものづくりを考えることが必要であるという認識の下、製造事業者のDXの目指すべき姿をお示しできるよう、スマートマニュファクチャリングのガイドラインの策定を進めています。足元の人手不足に悩む中小企業等には、ロボット導入などの省力化支援も進めてまいります。

 また、デジタル技術やデータを用いて新たな産業構造における競争力を獲得するため、航空機産業におけるモデルベースシステムズエンジニアリング等の技術を活用した新たな開発手法や、3Dプリンターによる「ものづくり」の変革、自動車産業におけるサプライチェーンデータの連携にも取り組んでいきます。

 事業者の皆様には、こうした施策を積極的に御活用いただくとともに、経営や組織のあり方を根底から変えていくような強い意思を持ってデジタル化に取り組み、企業の競争力強化に繋げて頂くことを期待しています。

〈宇宙産業〉

 人類初の月面着陸から半世紀余り、かつては国の威信をかけ各国が開発競争を繰り広げた宇宙分野に、2000年代以降、民間企業が相次いで参入しました。今や安全保障上も極めて重要な宇宙分野において、我が国が一定のプレゼンスを確保できるかの分水嶺にいると考えています。

 政府としては、これまで研究開発のみを行ってきたJAXAにファンディング機能を持たせるという歴史的な転換を図るべく、昨年の臨時国会において改正JAXA法を成立させるとともに、1兆円規模の「宇宙戦略基金」の設置を決定しました。経済産業省としても、本年、宇宙産業室を「宇宙産業課」として強化し、小型衛星コンステレーションの構築やそれを用いたデータビジネスといった、宇宙分野でのビジネスを強力に後押しする体制を整えるとともに、JAXAとの連携を抜本的に強化してまいります。

 我が国には、小型SAR衛星や光通信衛星、宇宙輸送技術などの分野で、世界でも有数の優れた技術を有する企業がいます。こうした技術をビジネスにつなげ、我が国宇宙産業の発展と、宇宙活動の自立性の強化に貢献できるよう取り組んでまいります。

〈おわりに〉

 産業界が今直面する課題は、官も民も一歩前に出て取り組まないと解決できないため、国内外で活躍されている産業界の皆様との日々の対話を通じ、将来につながる日本の経済基盤をともに形作っていきたいと考えております。

 GX、DX、経済安全保障といった新しい経済の軸に合わせ、成長につながる投資の形や事業分野の中身も変わっていきます。このように、外部環境が大きく変化する時代において、次の世代に世界で勝負できる成長産業を残し、また創っていけるかは、現役世代の我々に懸かっています。こうした覚悟をもって、本年も全力で取り組んでまいります。

 最後に、皆様の益々の御発展と、本年が素晴らしい年となることを祈念して、年頭の御挨拶とさせていただきます。

「国内投資の加速と成長力強化に全力を尽くす」
■経済産業省製造産業局産業機械課
産業機械課長 安田 篤

240101安田課長 令和6年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

 昨年は、コロナ禍が収束に向かい活気が戻った一方で、国際経済秩序が変化した年でした。こうした新たな経済構造の転換の時期において、産業界の皆様には、高水準の賃上げ実現や国内投資の促進等に、ご尽力いただきましたこと改めて感謝申し上げます。経済界の皆様のご尽力もあり、日本史上最高を更新する国内投資見通し、実に30年ぶりとなる高水準の賃上げの実現など、成長と改革の方向に向かう「潮目の変化」が生じています。経済産業省では、物価高に負けない賃上げを実現できるよう、引き続き賃上げのカギとなる取引適正化・価格転嫁対策の推進や事業再構築への支援、省力化や生産性向上の取組、中堅企業の大規模投資支援等を通じた、国内投資の加速と成長力強化に全力を尽くしてまいります。

 産業界では物価高やエネルギー高の影響で様々な課題に直面していると存じます。経済産業省では、足元のエネルギー高への対策として、燃料油価格、電気・ガス料金にかかる激変緩和措置を本年春まで継続するとともに、省エネ型の経済・社会構造への転換を実現すべく、企業・家庭向けの支援を実施します。そして、昨年に続きGXやDXも進めていきます。GXについては、昨年末に、エネルギー分野、くらし分野、産業分野それぞれにおいて分野別投資戦略を取りまとめました。これら各分野の戦略に基づき、20兆円規模のGX経済移行債を活用した投資促進策を実行していきます。DXについては、DXを実現した設備導入だけでなく、DXに資する人材の育成の支援も行ってまいります。

 また、産業界の皆様には、本年4月から適用されるトラックドライバーの時間外労働上限規制等により、輸送力の不足が懸念される「物流の2024年問題」の解決に向け、対策を講じていただいております。深刻な人手不足の中、産業界における物流の適正化や生産性向上のため、荷主企業の物流施設の自動化、機械化などに向けた支援策等を進めてまいります。

 1年後に迫った大阪・関西万博では、ポストコロナの新たな世界、次世代技術・社会システムが形作る未来社会の風景観を示し、我が国のイノベーションの可能性を世界に発信していきます。経済産業省として、世界中から来訪する様々な人達が刺激を与え合えるような万博にできるよう、準備に邁進してまいります。是非、産業界の皆様にも「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマに沿って一緒に盛り上げていただければ幸いです。

 我が国を取り巻く外的環境は日に日に厳しさを増しています。今後の経済成長の鍵となる戦略分野については国内投資、研究開発、人材育成等への支援にさらに力を入れ、安定的な供給に向けた取組を進めていきます。そして、経済安全保障に関する産業・技術基盤に影響が及ぶ脅威やリスクをいち早く捉えるために「経済安全保障に関する産業技術基盤強化アクションプラン」にまとめておりますように、産業界の皆様との戦略的対話を行って参りたいと存じます。また、イノベーションを支えるスタートアップのグローバル展開や人材育成等に対し幅広い支援を行うとともに、G7広島サミットで合意された、グローバルサウスとの連携強化の推進も進めてまいります。

 昨年12月には、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」構想の下での初のAZEC首脳会合を開催いたしました。経済産業省からMOU等の協力について報告を行ったところですが、引き続き官民連携してエネルギートランジションを進めていきたいと思いますので、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 こうした経済成長のチャンスを逃さぬよう、流動的な経済構造の変化を捉え、自由で公平な通商・貿易環境の構築、新たなイノベーションモデルを支える基盤の整備、加えて、日本経済の土台となる投資への支援等に重点を置いて政策を推進することで、日本経済の更なる成長に貢献してまいります。

 結びになりますが、本年が、皆様方にとって更なる飛躍の1年となりますよう祈念いたしまして、新年の挨拶とさせていただきます。