【現場の視点:近藤鉄工所の事例】分別だけでは終わらない 資源を守るために必要なこと 

写真:近藤鉄工所提供

 

超硬リサイクルは、実際の加工現場ではどのように受け止められているのでしょうか――。そんな疑問から、近藤鉄工所の近藤工場長にお話を伺いました。

同社では、「超硬をはじめとするレアメタル資源を大切にしたい」という考えのもと、会社全体で分別・リサイクルに取り組んでいます。

そのきっかけとなったのは、切削工具メーカーや商社から「使用済み超硬工具が海外へ流出するケースもあるため、できるだけ国内で資源を循環させたい」という話を聞いたことでした。

現在は社員教育を行い、超硬・サーメット・ハイスなどを種類ごとに分別。回収した超硬は、国内でリサイクルできるルートを重視し、住友電気工業へ回収を依頼しているそうです。

しかし、近藤工場長は、現場にはまだ課題も多いと指摘します。

情報交換会などで耳にする声は、

●「分別が面倒」
●「分け方が分からない」
●「超硬とサーメットの違いが分からない」

――というものです。

たしかに、超硬とサーメットは見た目もよく似ています。加工に追われる現場で、一つひとつ確認しながら分別することを負担に感じる人がいても不思議ではないでしょう。

さらに、「少しでも高く買い取ってもらえるところへ出したい」という考えも、企業経営としては自然な発想だと思います。

それでも近藤鉄工所は、「レアメタルという限りある資源を国内で循環させることが重要」と考え、社内で回収の仕組みづくりを徹底しています。

近藤工場長は、その継続には「回収の仕組みを整えるだけでは十分ではなく、実際に工具を使用するオペレーターまで含め、『なぜ分別するのか』『何をどのように分別するのか』という意識と知識を共有することが大切ではないかと思います」と話します。

同社では、冒頭の写真のように回収場所を種類ごとに分け、誰でも迷わず分別できる環境づくりを進めています。

さらに近藤工場長は、現在の超硬価格高騰についても、現場の率直な実感を語ってくれました。

「現在、超硬工具は年に複数回の値上げが行われるようになり、特にφ12以上の大径ソリッドエンドミルやソリッドドリル、超硬製モジュラーシャンクなどは都度見積もりとなるケースが増えています。見積価格も以前より大きく変動し、有効期限も短くなっているため、加工業者としては見積価格の設定が非常に難しくなってきました。

一方で、工具メーカー各社はヘッド交換式工具の提案を積極的に進めています。私自身も以前は、ヘッド交換式ドリルは価格が高く、コスト面で大きなメリットを感じていませんでした。しかし近年はソリッド超硬ドリルの価格上昇によって価格差が縮まり、トータルコストで見れば十分に採用する価値のある工具になってきたというのが、現場で加工を行う立場としての率直な実感です。

先日、タンガロイ本社を訪問した際にも、『ヘッド交換式ドリルは以前と比べて販売が大きく伸びている』と伺いました。また、住友電気工業でも、省タングステン工具の開発や超硬工具のリサイクルなど、限られた資源を有効活用する取り組みが進められています。

こうした動きを見ていると、今後は加工技術を高めることに加え、『超硬という貴重な資源をいかに有効活用するか』という視点が、製造現場においてますます重要になっていくのではないかと感じています」

わたしはこの話を聞いて、「超硬リサイクル」は単なる廃材回収の話ではないと感じました。

超硬価格の高騰、資源の安定確保、国内循環、そして工具選定など、これまで別々に語られてきたテーマが、一つの線でつながり始めています。

加工技術を磨くことはもちろん、今後は「限りある超硬資源をどう使い切るか」という視点も、製造現場の競争力を左右する時代になっていくのかもしれません。

近藤工場長の話は、単なる取り組み事例ではなく、現場からの問題提起であり、これからの製造業に対する一つの提言でもあるように感じました。
 

最後の写真は、別の会社の匿名希望さんから提供いただいたリサイクル箱。後ろの青い箱が超硬とのことです☆