工業デザインの重要性

友人の平川貴啓氏は工業デザイナーだ。
世の中で「おっ」と言ってもらえるようなシロモノを制作している。

この曲線が美しいビアグラスをご覧ください

このグラスは平川氏がデザインし、神奈川県にある相和シボリ工業さんが製造販売をしているのですが、この町工場を経営している大波 忠社長はなんと川崎市からマイスターの称号を頂いているんですよ。そう、このビアグラスはマイスターの絞り加工でできているのです! 

ちょうど本日2月8日~10日まで東京ビッグサイトで開催されている「ギフトショウ」で相和シボリさんが展示してらっしゃるので、お時間のある方はぜひご覧ください。

実は相和シボリさんに注目して、すでにびっちり取材済みです。次号の製造現場ドットコムの注目記事をお楽しみに!

話は変わりますが、工業デザインというのは産業において重要なものであります。
“売れるモノ”を考えるとき、絶対にハズせないのはデザインです。あのコカコーラが爆発的に世界中でヒットしたのも女性のクビレを意識した瓶のデザインにあったというのは有名な話。

案外、工業デザインについて見落としがちになりますが、ここ数年の流れとして爆発ヒットを飛ばしているApple製品を参考にすると、時代の流れと逆行して筐体プレス成形から切削に加工に変化しています。たくさんつくれるプレス加工が一品精密加工に近い切削でモノをつくっている。

これはなぜか――――?
Apple製品といえば、ピカピカのアルマイト仕上げ面。ここにヒットの秘密が隠されているようです。

この件に詳しいのは中川威雄東京大学名誉教授。中川先生はiPhoneを分解したようですが、釘づけになったのは、SUSのフレームでした。そのフレームの中にある複雑構造をした内部には小物プレス成形品をレーザーを使ってスポット溶接しているのも確認し、本体の形状の複雑さからみて、SUSをマシニングセンタで切削していると判断したのです。

その後に発売されたiPhone4も随分と凝った造りになっていますが、SUSフレームの内部はマシニングセンタによる切削加工の特長を十分に活かした構造設計がなされているようです。

中川先生が驚いていたのは、それだけじゃありません。
この場合、要する技術は金型製造技術です。「金型のように一品生産の精密加工技術を大量生産に結びつけた生産方式」だとしています。

見逃せない事実は、この爆発ヒットをしたApple製品を支えていたのは、精密加工技術に欠かせない“日本の工作機械”なのです。
Apple社の生産ラインでは日本の工作機械がたくさん貢献しているんですね。

Apple社のデザインへのこだわりは他社との差別化に見事成功したといえるでしょう。