【取材こぼれ話】「これが工業用ダイヤモンド!」住友電工の工場内でエキサイティング!
日本機械工具工業会の牛島会長のインタビュー後に、拝見するチャンスが滅多にない住友電工の工場内を見学させてもらいました。
同社は、世界初、国内初――というものを多く生み出しているんですよ。
まずは、アルミ系セラミックスをHIP処理で世の中に送り出したのは同社が初。
(HIP処理とはなんぞや? と思う方は、HIP処理でググってね☆)
国内では、刃先だけ交換できるフライス工具を国内でつくったのも、工具にPVDコーティングを初めて施したのも、この流れを活かして超硬工具で鋼を削るドリルも、同社が初めてです。同時期に焼入れ鋼をつくるボロンは世界に先駆け、出しました。
最近では、バインダーレスといって、糊の役目をするコバルトを使わないPCDとcBNを製品化しましたが、バインダーレスPCDも同社が世界で初めてつくった製品です。
大きいダイヤモンドを人工で合成するのも得意としている同社ではギネスにも載っているというからビックリですね。
そんな同社の工場内で、人工ダイヤモンドをつくる過程や、ツールエンジニアリングセンター内を見学させてもらいました。今回、秘密が多いので写真は当然NGですが、様々な取り組みを含めて知ることができました。
人工ダイヤモンドの製造とは
まず足を踏み入れたのは、人工ダイヤの秘密が詰まった工場です。
人工ダイヤをつくるには地球上でダイヤモンドができる過程と同じような環境をつくるんですが、ダイヤモンド工具は、この人工ダイヤを切り刻んで必要な分だけ貼り付けて工具として活用しているんですね。
研磨も必要ですが、ダイヤモンドは硬いから、結局、ダイヤでダイヤを加工するんですね。ダイヤモンドを使用した工具を製造するには手間がかかって設備もいるんですが、硬い材料を高能率で削ったりすることができるので、ダイヤモンド工具は非常にありがたい工具です。ちなみに同社はダイヤモンド結晶構造材料を使用したcBNでは世界トップのシェアを誇っています。
工業ダイヤモンドを拝見しました。黄色い粒です。綺麗ですが、天然ダイヤモンドで希少価値があるという無色なDカラーとは全然違う色合いです。でも、それはそれで可愛い。
「いやん、可愛い~」
やっぱりワタクシも女性ね。思わず、工業用ダイヤだろうがなんだろうがダイヤはダイヤよ! ってなわけで興奮しました。
人工ダイヤは、同社の超高圧の技術を使って、直径コンマ何ミリというダイヤモンドのタネと呼ばれるものをカプセルの中に均等に並べ、同社の超高圧の技術を使って成長させたもの。天然は地層の中でどんどん成長していくものですが、それを人工的に再現したものです。小さいダイヤのタネに対して、圧力や温度を調整することで、このタネの情報を持った結晶がどんどん成長していくわけです。
コンマ1ミリが1センチになるんですから凄いです。1センチのダイヤって凄いわ~。
と、ふと、疑問が―――。
これは、宝飾として使えるのではないか? と感じ、質問したところ、「宝飾には出していません」とのご返答。
工業用ダイヤモンドを人工的につくるということは、ダイヤモンドの特性、つまり品質面でも安定するというメリットがあります。ちなみに工業用ダイヤが黄色いのは窒素が残ってしまったためだとか。物理特性には影響を受けません。
加工最中に溶着しないようにするためには、ツルツルにして滑りを良くしなければなりません。そのため、人工ダイヤもポリッシュ!
さすがは住友電工、世界から注目されて当然の技術をお持ちです。スバラシイ!
世界に広がる「ものづくり」のサポート体制
同社では、ものをつくるためのサポート体制を強化しています。
工作機械を使った切削実演を中心とした研修や、テストカット、技術相談や、ユーザーを訪問して行うライン診断、ツーリング提案など、顧客が競争力のある“ものづくり”を行うためのヒントが詰まった「ツールエンジニアリングセンター」は、国内が伊丹、横浜、北海道、三重、佐賀、今年11月には福島がオープン、海外では、ドイツ、タイ、中国、インド、インドネシア、アメリカに設置されており、幅広いソリューション提案を行っているんですよ。
ツールエンジニアセンターが初めて設置されたのはここ、伊丹。10年経った去年にリニューアルしたという「ツールエンジニアセンター」にお邪魔いたしました。まずはセンター内にある2Fのショールームへ。
住友といえば、グリッドデザインの“イゲタ”のマークを思い出す方も多いでしょう。
床も含めてイゲタのグリッドデザインが施されています。なかなかお洒落な内装で、そのままコーヒーでも出てきそうな雰囲気。
セミナー室もあって、ここは50人ほど聴講できる広さを有しています。
ショールームに大きなパネルがありました。
住友事業精神がひと目で分かるパネルが歴史を語っています。同社は1897年に出来たのですが、もともとは電線をつくる会社でした。線引きダイスをつくる技術がどんどん広がっていったんですね。
先ほど、コバルトを使わないバインダーレスPCDを世界で初めて商品化したと述べましたが、コバルトなしでは通常は焼結できないんですから、この生産技術というのは本当にすごい。なお、コバルトの重要性に触れたところは、日本機械工具工業会の牛島会長のインタビューの記事中にあるので、ぜひ、ご覧下さい☆
▼インタビュー記事はコチラ▼
http://seizougenba.com/node/9058
ショールームを見学したあとは1Fへ。
ここは、実際にお客様のワークを持ち込みテストカットができる場であり、より深い技術提案を行っていることが分かりました。
機械は全部で13台。お客様の要望に合わせて削れるように取り揃えています。
ここで、アルミニウム合金の切削加工を見学しました。使う工具は同社の最新型工具!
先ほど見学したダイヤモンドを使用している工具です。多刃使用で、12枚の刃のうち11枚がダイヤモンドのチップで、1枚だけ単結晶チップ。
これで加工をすると―――。
チュイン! で終わっちゃった。切削速度が非常に速く、拍子抜けしたワタクシ。
鏡のようにピッカピカのワークには工具が映り込んでいました。
この工具の最大の特長は、切削加工ではあり得なかったバリが出ないこと。この技術は独自技術とのこと。いやあ、良いものを見学させていただきました。
現場の加工改善を実現するためのネタが盛りだくさんな、同社のツールエンジニアセンターでした☆
プロフィール
業界新聞社の取締役編集長を経て、インダストリー・ジャパンを設立。製造現場は日本の底力!をスローガンに製造業専門ニュースサイト「製造現場ドットコム」を運営している産業ジャーナリスト兼フリーライターです。霞ヶ関から錦糸町まで守備範囲が広いのが特長。現場取材は数知れず。些細なことや泥臭いことに真実が隠れているのを知り、今では何より本当のことを言うのが大好き。いつも働く女性と頑張るオヤジたちの味方よ。
ブログでは取材のこぼれ話やお知らせのほか、日常のことを綴っています。
機械振興会館 記者クラブ加盟
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