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直目

デジタル化は手段であり目的ではない

ブログにも掲載したが、10月初旬に都内の病院に9日間も入院してしまった。良かったことといえば、痩せたことぐらいか。とはいえ、健康的な痩せ方ではないので、リバウンドに怯える日々を送っている。

さて、入院中に気になることがあった。最近は、病院も一気にIT化が進んでいるようだ。担当看護師もPCをカートに乗せてやってくる。点滴などの薬剤を何時に投入したかPCに入力し情報を共有しているのだ。この作業により、〝申し送り〟がスムーズにいき、必要な患者の情報が効率よく伝わることができるのだろう。

製造現場をメインに日々、取材に明け暮れているわたしとしては、作業効率の向上については、非常に気になるところ。それが例え病院でも、だ。

今回、残念ながら、デジタル化に伴う大きな落とし穴を目の当たりにした。アナログな考えのもとでいくらデジタル化をしても、アナログゆえの非効率さとポカミスは減らないだろう。

5日間は24時間点滴で命を繋いでいたわたし。その間、絶え間ない術後の痛みに苦しみもがいていた。痛み止めの点滴は1日に回数が決まっているので、そうそう注入できないのだが、あまりに痛くて苦しい場合、ナースコールを押して痛みを訴えれば、前回の注入より4時間あけば打って貰える。

当初は4時間ほどで痛み止めが切れ苦しんだ。朝だろうが夜中だろうが、4時間で痛み止めが切れてしまう。ああ、痛い痛い痛い~。

痛いので痛み止めの点滴を打ってもらうと数時間はラクになる。この間に眠りにつくのだが、痛み止めの点滴も終了し、うとうとしているところ、30分もしないうちに先ほどとは違う看護師がやってきた。なんと、注入してもらったばかりの痛み止めの点滴の準備をしているではないか。いや~目覚めてよかった!

「それ、痛み止めですよね? 先ほど注入してもらいましたよ」というと、「あらっ! ほんと?」という。どうやらPCへの記入漏れを起こしていたらしい。恐ろしいこっちゃ!

いくらデジタル化を推進しても、そもそもの発想がアナログだから、こうしたミスが起こるのだと感じた。単に入力して見える化するだけでは、紙やボードにマジックで書いて貼り付けておくのと大した変わらない。

他にも、今回、数人ほどに何度も何度も食材のアレルギーについて聞かれ、その都度、痛みを堪えて説明をしていたのにも関わらず、アレルギーのもととなる食材が出てきたので、チクリと嫌みを言ってしまった。対応したそれぞれが、おそらくPCに入力しただろうと想像するが、単に入力するだけでは、情報共有にはならない。

どうせなら病院でも、製造現場で最近トレンドとなっている工具管理システムのように、病院もバーコードやQRコードのようなもので、誰が、どの患者に、どんな薬剤を注入したか、を管理するようなシステムがあってもいい。さらに、患者のベッドにはバーコードやQRコードがついていて、合致させるシステムがあるとポカミスも減るだろう。

近年、DX等、新たな取り組みがどんどん進化し、頼もしく感じるが、デジタル化を目的にしてしまうと、その先にある「なんのためのデジタル化をするのか」が抜けてしまう。

効率向上のはずが、ミスが起きると、そのミスの原因を探るにも時間がかかり、「よくわからな~い。それ、入力したのは僕(私)じゃないから言われても困る~」という責任のありかも曖昧になる可能性だってあるのだ。いや、もう、すでにそういう場面に数度遭遇しているぞ。

幸いにも私が取材した製造現場では、こうしたミスは聞いたことがないうえ、DXもかなり進んでいる。この技術が、病院でも採用されればいいのになあ、と思う今日この頃でした。
 

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