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直目

デジタル化は手段であり目的ではない

ブログにも掲載したが、10月初旬に都内の病院に9日間も入院してしまった。良かったことといえば、痩せたことぐらいか。とはいえ、健康的な痩せ方ではないので、リバウンドに怯える日々を送っている。

さて、入院中に気になることがあった。最近は、病院も一気にIT化が進んでいるようだ。担当看護師もPCをカートに乗せてやってくる。点滴などの薬剤を何時に投入したかPCに入力し情報を共有しているのだ。この作業により、〝申し送り〟がスムーズにいき、必要な患者の情報が効率よく伝わることができるのだろう。

製造現場をメインに日々、取材に明け暮れているわたしとしては、作業効率の向上については、非常に気になるところ。それが例え病院でも、だ。

今回、残念ながら、デジタル化に伴う大きな落とし穴を目の当たりにした。アナログな考えのもとでいくらデジタル化をしても、アナログゆえの非効率さとポカミスは減らないだろう。

5日間は24時間点滴で命を繋いでいたわたし。その間、絶え間ない術後の痛みに苦しみもがいていた。痛み止めの点滴は1日に回数が決まっているので、そうそう注入できないのだが、あまりに痛くて苦しい場合、ナースコールを押して痛みを訴えれば、前回の注入より4時間あけば打って貰える。

当初は4時間ほどで痛み止めが切れ苦しんだ。朝だろうが夜中だろうが、4時間で痛み止めが切れてしまう。ああ、痛い痛い痛い~。

痛いので痛み止めの点滴を打ってもらうと数時間はラクになる。この間に眠りにつくのだが、痛み止めの点滴も終了し、うとうとしているところ、30分もしないうちに先ほどとは違う看護師がやってきた。なんと、注入してもらったばかりの痛み止めの点滴の準備をしているではないか。いや~目覚めてよかった!

「それ、痛み止めですよね? 先ほど注入してもらいましたよ」というと、「あらっ! ほんと?」という。どうやらPCへの記入漏れを起こしていたらしい。恐ろしいこっちゃ!

いくらデジタル化を推進しても、そもそもの発想がアナログだから、こうしたミスが起こるのだと感じた。単に入力して見える化するだけでは、紙やボードにマジックで書いて貼り付けておくのと大した変わらない。

他にも、今回、数人ほどに何度も何度も食材のアレルギーについて聞かれ、その都度、痛みを堪えて説明をしていたのにも関わらず、アレルギーのもととなる食材が出てきたので、チクリと嫌みを言ってしまった。対応したそれぞれが、おそらくPCに入力しただろうと想像するが、単に入力するだけでは、情報共有にはならない。

どうせなら病院でも、製造現場で最近トレンドとなっている工具管理システムのように、病院もバーコードやQRコードのようなもので、誰が、どの患者に、どんな薬剤を注入したか、を管理するようなシステムがあってもいい。さらに、患者のベッドにはバーコードやQRコードがついていて、合致させるシステムがあるとポカミスも減るだろう。

近年、DX等、新たな取り組みがどんどん進化し、頼もしく感じるが、デジタル化を目的にしてしまうと、その先にある「なんのためのデジタル化をするのか」が抜けてしまう。

効率向上のはずが、ミスが起きると、そのミスの原因を探るにも時間がかかり、「よくわからな~い。それ、入力したのは僕(私)じゃないから言われても困る~」という責任のありかも曖昧になる可能性だってあるのだ。いや、もう、すでにそういう場面に数度遭遇しているぞ。

幸いにも私が取材した製造現場では、こうしたミスは聞いたことがないうえ、DXもかなり進んでいる。この技術が、病院でも採用されればいいのになあ、と思う今日この頃でした。
 

「いぬねこごはん.COM」はペットの健康管理に強い味方

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ペットフード選びに心強いサイトが登場! 

 

 先日、うちのおキャット様が体調を崩した。猫は毛玉を吐く生き物なので、ゲロってもいつものことと流してしまうのだが、毛玉を吐いたあとだというのに、連日吐いているではないか。そのうち、水を飲んでも吐くようになり、とうとうグッタリしてしまった。あまり吐くと脱水症状を起こしてさらに体調が悪化する可能性があるので、すぐさま病院に連れて行った。考えたくもないが、悪い病気になった可能性もある。エコーやらレントゲンやらと様々な検査をしたのち、どうやら「食べ過ぎ」が原因だということが分かった。

 そういや、わがおキャット様は、淋しいと「ご飯を食べるからお利口してにゃ~」とばかりに呼びつける。ご飯を食べると「いい子だねえ可愛いねえ天才だねえ」とおだてて育てたのがマズかった。おキャット様は、注意を自分に向けるためにはなんでもするお姫様だ。わたしを下僕のように呼びつけてはキャットフードをモリモリに食べる。食べ続けると、人間同様に胃も悪くなって当然だろう。

 おキャット様の体調不良につき、わたしの財布に痛々しい爪痕が残ったが大事には至らずホッとした。このとき、少々、ペットのおやつやフードについて考えた。ペットフードはペットの体調管理に重要なものだ。人間が胃を痛めた時には、カレー、天ぷら、ステーキが食べられず、お粥など、あっさりしたものを欲するものだが、ペットにも体調不良に合わせたフードがあってもよいはず。しかしながら、食材を調べもせずに販売しているフードやおやつを与えていいものかどうか・・・。

 (う~ん。どうしたらいいんだろう・・・・・)

 慎重になったのはワケがある。今から3年前に起きた出来事を思い出していた。

ペットフードの情報は重要

 すでに3年前、連載させていただいている月刊ベルダのコラムにも書かせていただいたが、心配に至った経緯はこうだ。

 当時、テレビの情報番組で衝撃的な映像を見たことから始まった―――。

 それは飼い犬がペットフードを食べてサルモネラ菌に感染し、もがきながら最期を迎える映像だった。可哀想で直視できず目を背けてしまうほどだったが、この時の解説者によると、ペットフードは日本の安全基準よりもアメリカの方が厳格だ、という旨を述べていた。具体的にはFDA(米国食品医薬品局)かAAFCO(米国飼料検査官協会)の表示があるものが安全だとのこと。これを受け、わが家のキャットフードをすぐさま確認したところ、AAFCOの表示があったので安心したと同時に、日本はペットフードの情報が貧弱なことに気付いた。

 このペットフードを販売した組織によると、製造元の商品からサルモネラ菌が検出され、68匹のペットが嘔吐や下痢、さらには死亡するなどの重大な健康被害があったというではないか。驚いたことは、この組織は当時、ペットフードを食品だけでなく生活用品に位置付け、細菌基準を設けていなかったという点だ。このとき、「今後はペットの健康被害を人の健康被害と同様に扱うこととし、加工食品と同等レベルの微生物基準を設定する。」としたので、現在はすでに改善しているだろうが、3年前の出来事とはいえ、己の脆弱な記憶にこびりついているほどショッキングな出来事だったわけで、ペットとともに生活をしている方なら、フード選びが慎重になるのも当然だろう。

 このような事故が発生すると必ずネックになるのが、「動物は物」というわが国の法形態の抜き差しならぬ概念だ。ドイツは民法を改正し「動物は物ではない」ことを規定、イギリスは「動物健康法」を制定、フランスは「動物を感覚ある存在」と規定、アメリカは「修正動物福祉法」を制定するなど、いずれも30~40年前から施行している。

 なお、わが国では、そこから遅れて2019年6月に改正動物愛護法が成立。欧米にほんの少し近づいたようだ。

助っ人となった「いぬねこごはん.COM」

いぬねこごはん2
愛情溢れるお食事レシピも投稿でき、情報を楽しく共有できる

 

 さて、前置きが長くなってしまったが、こうした経緯もあり、わがおキャット様のお食事には大変気を遣っているわたし(下僕)である。そこで助っ人になったのは、「いぬねこごはんドットコム」(代表=鈴木健太氏 https://inunekogohan.com/)というサイトだ。なんと2000種類以上の犬や猫用フードの情報をデータベース化しており、ペットの年齢や種類はもちろん、ご飯の素材、粒サイズ、食材の効能から体調の悩み別、気になるフード代(ランニングコスト)まで、効率良くペットのニーズに合致したフードを絞り込み、選んでくれる。

 手作りのペット用お食事レシピも投稿できるページもあり、SNSと連動しているので、情報を楽しく共有できる仕組みもあった。飼い主の愛情の深さやおペット様たちの可愛らしい様子にもキュンキュン刺激される。また、フードブランドの特長なども分かりやすく紹介しているほか、フードがペットに与える影響などかなり突っ込んだ情報も豊富に盛り込んでいるので、おキャット様のお食事情報に飢えているこちらとしては、非常にありがたかった。

 鈴木代表に運営の狙いを尋ねたところ、「ペットたちの飼育環境改善、そして欧米諸国のように、人間とペットがもっと近い存在で共存していける社会となるよう貢献したいと考えた事が一つです。少子化やコロナ禍の影響を受け、ペット飼育率が増加の傾向にありますが、飼主にとって大切な事は、ペットを最後まで家族の一員として迎える責任、そして、ペットが幸せに過ごせる環境づくりだと考えます。中でも、『食』は、飼主しか選定出来ない重要なものであるため、広く重要性を伝えていく必要があると感じております。」と述べており、今後、ペットフードメーカーや動物愛護団体との連携を強化しいく方針だ。

 鈴木代表の活動は始まったばかりだが、日本とペットが共存していける社会に貢献するものとして、大きな期待が寄せられる。

↓いぬねこごはん.com↓

https://inunekogohan.com/

気をつけても流れ弾

コロナ禍が落ち着かないうえ、物騒な事件が多くなりました。小田急線の車両内ではいきなり男が若い女性を刺したり、白金高輪駅では硫酸ぶっかけ事件も起きました。こちらは顔見知りの犯行のようでしたが、そばにいた罪のない女性が巻き添えで怪我をしてしまいました。脚にやけどをしたようですが、痕が残ったらと思うとやりきれません。どうか恐ろしい事件の被害に遭われた方々の回復が進みますように。

鬱積した気持ちを抱えた人の怒りの矛先が見ず知らずの人に向けられた時の恐ろしさに震えます。気をつけようがありません。日本は他国に比べて治安の良さはピカイチでしたが最近はそうもいっていられなくなりました。

防ぎようがないといえば、先日、朝一で漢方を処方してもらうため定期的に通っている病院に行ったところ、某ビル20Fにある疾患別に診療を設けている予約制の病院にゲホゲホ咳をしながら、初老男性がズカズカと入ってきて大騒ぎをしている場に遭遇してしまいました。自分でも悪運が強いと常々思っているのですが、こういうヒキの強さもあるんですね(笑)

他の人が受け付けをしているのにもかかわらず、「誰か対応してくれ~」と言わんばかりに近くにいた職員を呼び、「ゲホゲホ・・1年前に●●先生に診て貰ったことがある。咳が出て、喉が痛くて水も飲めない。診察して欲しい。ゲホゲホゲホ」。周囲に人がいてもお構いなしです。

入り口にはデカデカと張り紙(←熱や咳、鼻水、喉の痛みのある方はご連絡くださいというアレ)を無視して入室し、切羽詰まった様子で訴える症状から、流行病の嫌な予感がします。こちらは7月中に基礎疾患持ち枠で2度のワクチン接種を終了しているとはいえ、ひゃ~~やめてぇえええええ!(←心の声) ツバメのような速さで部屋の隅っこまで逃げました。

受付の人は、取り乱すこともなく、「診察ができるかどうかは分かりません。少々お待ちください。」のようなことをおっしゃっていましたが、その後、彼がどうなったか分かりません。

予約もなしに予約制の専門外来に〝水も飲めない激しい喉の痛みと激しい咳〟の症状でやって来たことから、おそらく、どこも診察をしてくれないだろうから直接来た・・という理由があったのかもしれません。そう思うと不憫なのですが、激しく咳き込みながら20Fまでエレベータに乗ってきたのかと思うと、不安な気持ちになります。換気の悪い同じエレベータの中にいた方は、防ぎようがありません。

その後、自宅に到着したあと、早朝、お風呂に入ったにもかかわらず、もう一度、シャワーを浴びて髪の毛を洗い、化粧をとり、そして着ていた服を全部洗う羽目になりました。これで午前中は終了です。メイクをする時間もないほど身支度が間に合わなかったのですが、その後、オンライン会見だったので、いろんな意味で助かりました。

しかしながら、わたしが遭遇した初老男性も、通常ならば国民の義務のひとつである納税を実行していると思われます。国民の義務を果たしても、病気になったら診て貰えない世の中になったのかと思うと、それってどーなのよ? と正直思ってしまいます。

最近、救急車をよく見かけても、サイレンを鳴らしていないことが多いことに気付きました。あちらこちらに停車しているのをみて、憶測ですが病院の受付が困難な状態なのかと感じました。えらいこっちゃですよ、これは。ひょっとしたら、TVの情報番組で放送されているよりも現実はさらに厳しいものなのかもしれません。

【注意】「工事のごあいさつ」 実は詐欺セールス! ~怪しい作業着の男~

コロナ禍と連動してなにかと物騒なご時世。振り込め詐欺など相変わらず年寄りを騙す悪い奴らが暗躍しておりますが、詐欺は振り込め詐欺だけではないので注意が必要です。

ピンポ――――――ン。

先日のこと。

インターフォンが鳴ったので、モニターを見ると、近年イケてる男の定番ヘアスタイルの代表格、ツーブロックの髪型に作業着をまとった若い男・・・・というより、崩れて売り物にならぬブロッコリーのかぶり物をしているような男が映っていた。チャイムに設置してあるカメラを意識しているのか男は正面を向いておらず、右に左に揺れている。

(ぬぅうう! 怪しい!) 

カメラ付きインターフォンに対し、正面を向けない理由でもあるのでしょうか。

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怪しすぎてめまいがします

ひょっとしたら泥棒の下見かもしれない。居留守を使うと留守だと思って忍び込んでくる可能性もある。残念ながら、泥棒が満足するほどの財産も金もないので、万が一、凶暴な輩に襲われた場合、その日のニュースには、「美人ライター刃物で刺され重傷 3千円入りの財布を奪われる」(←美人は余計だという怒りの声は聞こえません)のショッキングな見出しが付く可能性が大きい。

3千円を取られて大けがを負ったうえ、いい年こいた大人の財布の中身が「3千円しかなかった。」という恥ずかしい事実を世間に知らしめかねないので、しぶしぶインターフォン越しに対応することにした。

男は横を向いて肩を揺らしながら、「ご近所で工事をするのでご挨拶に来ました。騒音等でご迷惑をおかけするかもしれません。説明をしたいのですが。」と話した。マスクをつけているうえ、顔が横に向いているのでモニターからは表情を確認することができない。別角度から映してある防犯カメラのモニターを見るとドアの前でエビのように身を屈めている男の姿が映っていた。

騒音をめぐる挨拶に来たというのに、手ぬぐいの一枚も持っていないところが怪しい。しかも、この男、最初から社名を名乗っていない。通常、こうした場合は、社名と名前を言うはずだ。

―――やっぱり怪しい。ドアを開けることなく、「はい。承知しました。わざわざどうもありがとうございます。」と言ってインターフォンを切った。男は右に左に肩を揺らしながら、獲物を取り逃がした小動物のようにしょぼくれて帰って行ったが、その姿から漂う〝違法〟なニオイをなんとなく感じ取った私は、家族に、「このあたりは高齢者が多いので、怪しいヤツが騙そうと彷徨いている可能性があるよ。泥棒の下見かもしれないから、居留守を使わないようにね。そして怪しいと思ったら絶対にドアを開けちゃダメだよ。」と注意を促した。

確認のため、ポストの中を覗くと、ダサいツーブロッコリー頭の男の名刺も、工事のお知らせも、ご挨拶の定番である手ぬぐいも入ってはおらず、ものすごく気持ちが悪くなった。

たしかに近くで工事をやっているが、騒音が響くほど近場ではない。近隣はつい最近、工事が終わったばかりだ。ちなみに、その際、うちには挨拶に来なかった(笑)。なお、本当に騒音が出るほどの工事が行われる場合、大抵、ペラ紙の〝お知らせ〟がポストに入っているものだ。

ところが翌日。

今度はヒョロガリタイプの作業着を着用したこれまた若い男がやって来た。内容は前日と同じく、「ご近所で工事をするので挨拶に来ました。」という。相変わらず、よく顔が見えない。昨日の今日で、立て続けにご挨拶とは。

「わざわざありがとうございます。ちなみに、ご近所ってどこですか? お隣さんですか?」と尋ねてみると、「はい。そうです。説明をしたいので・・・」と、昨日同様、ドアを開けてもらうための正当性を示しているものの、こちらからすると、この返答自体が、不当そのものである。なぜなら、近隣は、ちょいとした建屋の直しをこの前に終えたばかりだ。すぐにまた工事を始めることなど考えにくい。

「お隣さんって●●ハウスの工事ですね。」と適当なことを言ってみたところ、悪びれる様子もなく、「はい。」と返答をする始末。なんとまぁ、この嘘つきめ!

男のデタラメを確信した瞬間である。社名と名前を名乗ることなく、工事の具体的な場所も自ら示さないこの男の目の前にあるドアを開けるわけにはいかぬ! 深呼吸をしたあと、逆恨みをされても困るので、「ご苦労様です。」と一言いってインターフォンを切った。

屋根工事のインチキ勧誘を思い出した!

数年前、似たようなことがあった。
「近くで工事をする者です。ご挨拶に来ました。」と、作業着姿の若い男がやって来たことを。当時はカメラ付きインターフォンを設置しておらず、うっかりドアを開けてしまった。

男は、「騒音がうるさいと思います。なにかあったら言ってください。」と言った。当時は、「はい。親切にどうもありがとうございます。」といってドアを閉めた。が、このとき、社名も具体的な場所も示していないのに気付いた。

直感的にモヤモヤしたものがあったが、鳥のごとく秒速で忘れた私。ところが30分もしないうちにこの男が舞い戻ってきたではないか。

「すみません。先ほど挨拶をした者ですが・・・。ちょうど、うちの親方がこの家の見えるところで作業をしていまして、お宅の屋根の一部が剥がれている部分があるんで、危ないって言ってるんっすよ~。で、知らせて来いって言われたんです。台風が来たら危ないからって。」と、いかにも気のいい親切な業者の言うような台詞を並べた。

「ええっ!? 屋根が剥がれてるですって!」

驚いた私は、先ほど感じたモヤモヤもすっかり忘れ、またもドアを開けて外へ出てしまった。男は、「ちょっと屋根を見ましょうか? これ危ないですよ。台風が来たら飛ばされますよ。」とボロ屋根の方へ人差し指を向けた。

(台風で屋根が飛ばされたら大変だ!)と仰天した私。そりゃ~屋根が飛ばされて、どこぞの建屋に激突し、被害が出たら目も当てられない。うろたえた私を見て、作業着の男はしめしめと思ったのだろう、「強風が吹いたら危ないですから、ちょっと見てあげますよ。」とニヤリと笑った。

(なんて気持ちの悪い笑顔なのだろう・・・・)。

ふと、悪徳業者の手口に似ていると感じた。シロアリ駆除でも、外壁リフォームでも、布団でも、こうして相手の根城にまんまと足を踏み入れた悪徳業者は大抵、最初に親切心を押し出して相手の警戒レベルを下げ、そして不安を煽るものだ。

業務上、長年、多くの殿方たちを取材してきたが、目の前にいる男のまとう雰囲気が普段から接している殿方たちとは全く違うことにも違和感があった。目線がしっかりしておらず、右に左に身体が揺れている。作業着が汚れていない割には、靴がもの凄く汚かった。このバランスの悪さも気になった。

「ちょっと待ってて下さい。」

仕事で使用しているカメラに望遠レンズを装備し、首からぶら下げてもう一度、外に出た。男は一瞬ギョッとしたようにも見えたが、ここまできたら手を緩めてはいけない。「親方さんはどこの建物から屋根を見ているのですか?」と男に尋ねてみる。すると、男はポツリと「あっち。」とだけ言って人差し指を向けた。おいおい、幼稚園児か、おまえは。

望遠レンズを上に向け、親方を探すが、住宅が密集しているので空間が狭く、確認できない。よくよく考えると、この家の屋根が壊れていることが丸っと確認できるほどの高さを確保している建物がないことに気付いた。

「う~ん。ここからじゃ親方さんは見えないですね・・・ところで私もこういう商売をしているものだから、どこがどうなっているのかきちんと確認をしながら作業をしないと気持ちが悪いんです。問題箇所を撮影しますので教えてください。のちのちトラブルになるといけないですしね。」といって、カメラを若者に向け、ゆらゆらと見せつけるように揺らした。

「で、親切な親方さんはなんという名前ですか。そちらの会社名を教えてくださいませんか。」

「・・・・・・言えません。」

「なぜ言えないのですか?」

「親方に迷惑がかかりますから。」

「なぜ迷惑がかかるのですか。」

「・・・・・・もう、いいです。」

「そうですか。わかりました。」

男はそのまま、背を向けて帰って行った。このあと、不信感の高まりからネットで「工事のお知らせ 親方 屋根」で調べてみたところ、出るわ出るわのリフォーム詐欺! 台詞がまったく一緒で唖然としたわよ。 

この男のいいなりになっていれば、法外な金額をふっかけられて、涙で枕を濡らしていた日々を送っていたに違いない。

それから数年後、また、似たようなことが起きるとは・・・・世知辛い世の中になったもんですな。

この手法、結構、流行を見せているようですので、皆様も気をつけてくださいね。もし、「工事のお知らせで来ました。親方がお宅の屋根が剥がれているので、危ないから教えてやれって言ってるんです。」と言われたら、「今、手が離せないので、名刺をポストに入れておいて下さい。」と言うのも一案です。まともな業者であるかどうか、調べる方法はいくらでもあります。その場ですぐに返答しないことがコツです。

これらの手口、大抵詐欺です。自治体によっては注意喚起がされており、用心に超したことはありません☆
 

「日本版CDC」どこいった?

 緊急事態宣言も3度目となると、もう、我慢の限界! 度重なる変更等で、うっかりミスも増加する己が悩ましい・・・ということで、久々にコラムを更新します。この内容は、すでにベストブック社の月刊ベルダ5月号に書かせて貰ったものを少々アレンジしています。

 最初の新型コロナ緊急事態宣言から1年が経過した。当時はクルーズ船内の感染でのドタバタが毎日のようにニュースで流されるたび、現場と厚労省の間で役割と責任分担が明確化されていないのが目についた。非常時における指揮命令系統の欠如や情報の錯綜は現場を混乱させ、これらが国民に不安を与える材料になったと感じている。

 このようなことが影響したのか、経団連は早々に、「感染拡大は予測不能でひとたび非常事態が発生すれば迅速な対応が求められる。スピード感を持って判断をしていくためにも平時からの備えと有事の際の強力なリーダーシップが極めて重要」とし、アメリカのCDC(疾病予防管理センター)を参考に『緊急事態における司令塔機能の強化』を提言した。また、わが国の医療系138学会からなる日本医学会連合も「科学的なエビデンスに基づく政策提言と情報分析・活用ならびに人材育成・活用の支援を行う常設組織の創設」を提言し、具体的には情報の一元化による国・自治体・アカデミア・国民の間での必要な情報の共有と活用など6項目目を要請している。連合会は原発事故で健康被害が懸念された10年前にも諸外国には設置されているCDC機能が日本にないことから「Japan CDC」の創設を提案しており、他にも諸団体や自民党の大物議員が同様の提言を行っていた。

 当時、これらの提言を政策に織り込むというような報道があり、早急に実現して欲しいと願っていたが、なんと! いつの間にか、この話題が消えているではないか。

 そういえば、某情報番組で某コメンテータが「官邸と厚労省は考え方に大きな差がある。しかも仲が悪い」というようなコメントをしていたことを思い出した。う~ん、本当なのか、これは。

 だから国の体制も、新型コロナウイルス感染症対策の専門家会議や、分科会、アドバイザリーボード、基本的対処方針分科会など、複雑すぎて分かりにくいのか・・・と、思わず口角が下がってしまった。それに加え、実質的な司令塔が経済再生大臣なのか、厚労大臣、官房長官、はたまた分科会会長なのか、いまいちハッキリしておらず、実質的な司令塔が誰なのかもさっぱり分からない。口角下がりっぱなしのへの字口で、マツコ・デラックスさんのように「なんかさぁ~あれじゃな~い?」と呟きたくもなる。

 本来ならば、厚労省が司令塔になってシンプルな体制で機動的にこの憎たらしい極悪ウイルスと戦っていくべきじゃないのか。なぜ、厚労省が「日本版CDC」創設に手を付けなかったのか、謎だ。

 新型コロナ対策と厚労省を対比すると、まず憤るのは、ワクチン政策である。昨年まで、わが国はワクチン先進国だと思っていたが、いつの間にか、後進国に成り下がっているではないか。これは国産ワクチンについて消極的政策をとったからだと感じている。結局、海外のワクチンに頼らざるを得なくなった。しかもワクチン争奪戦に出遅れ、ワクチン接種担当大臣をつくる羽目になった。

 個人的に許せないのはPCR検査だ。あれだけ検査数の拡大要求があったのに人手不足を理由に抑制し続けた。これまた個人的な意見だが、わが国の生産技術開発力で相当カバーできたはずだ。自動検査機の開発品も海外で活躍する始末だから、目を覆いたくなる。

 今は日本全国、変異ウイルスとの戦いの日々だが、ゲノム解析ロボットの新開発を支援・助成し、〝国内に配置する〟動きを感じない。これらの開発をもっと活発化してほしいと願っている。

 「厚労省が変わらなければ、この日本は変わらない」をスローガンに始まった省内若手改革チームに期待しているが、国民の命を預かる厚労省なのだから、積極果敢な政策を渇望している。若手よ、頑張ってくれ!
 

記憶の回路と緊張感

コロナワクチンの出現により、明るい未来が見えてきたということもあって最近、めっきり業務量が増えつつある。今後のことを考えると、動画の見せ方もビジュアル的に進化させなければならず、従来とは違った業務も増えており、やらなければならいことは山のようにある。

ところが、アレやコレやと処理をしている最中に、(はて? あれっ今、なにをやろうとしていたんだっけ?)と、忘れてしまう。先ほども電話に出たあと、メモを紛失した。さっきまで机の上にあったはずなのに、忽然と姿を消している。どこにいったのかと焦って探してみたところ、台所にあった。おそらくツマミ食いをしようとして、無意識にキッチンまでメモを持っていったのだろう。それを思い出せない己が情けない。

もともと脳の働きが鈍かったとはいえ、ここまで脆弱な脳みそではなかったはずだ。忘れっぽくなっているのはなぜだ!

大人よりも子どものほうが記憶力は良いとされている。どうして大人になるにつれ、脳の働きが悪くなるのか―――と考え抜いた挙げ句、次のような仮説が思い浮かんだ。

子どもは新たに経験したことをスポンジが水を吸収するように覚えていく。転んだら痛い、親に叱られたら怖い、褒められたら嬉しい、冬は寒い、夏は暑い、お腹が減ったらヤル気がなくなるなど、複雑な感情とともに、成長する過程で様々なことを経験していく。これらは世の中を生きていくために必要な知恵だ。

初めて行うことは、ある程度、緊張が伴う。親元から離れて初めて他人の輪の中に入った学校生活や、初めて社会人になって仕事を覚えなければならなかった時など、意識をしなかっただけで緊張感がある生活があったと思う。若いうちは初めて経験することも多いので、覚えなければならないことがたくさんあった。これが無意識に緊張感につながっていたのかもしれない。

経験したこともない未来のトラブルを勝手に想像し、怯えながら悩んでいたこともあった。例えば、若いときは、好きな男の子の裏の顔がとんでもないロクデナシだったらどうしようか、フラれるかもしれないとか、仕事では、ちょっとしたミスでクビになったらどうしようか、人間関係で面白くないなど、今、考えると、こんな些細なことで一大事のようになにを悩んでいたんだ、馬鹿馬鹿しい・・・とは思うけれど、経験が未熟なため、対応の仕方が分からず悩んでいたに違いない。悩めばあれこれ未熟な頭でも考え抜いて行動をするため、ある程度の記憶力は必要なのだ。そうしなければ、己の立ち位置が怪しくなる・・・とこれまたどうでも良すぎて周囲が考えていないことを勝手に想像できるのも若いうちなのだ。

ところが成人して年の数が増えてくると、大抵は様々な経験をする。それこそ立ち位置が悪くなったり、こっぴどく叱られたり、立ち直るのにも時間がかかるほど自尊心を踏みつけられたりする事象が起きてくる。

そうしてある程度の年齢に達し、泣いても笑っても明日は来る―――という普遍の事実を噛みしめる。こうなると、〝時が解決するさ〟、〝命までは取られやしないよ〟、〝公園では水がタダで飲める〟と、ちょっとのことぐらいでは動じなくなり、腹回りと比例して神経も太くなってくる。

トラブルにおいて対応の仕方や自分の感情をコントロールする術を知った大人は、緊張感がなくなっても平気なのだ。

つまり、経験豊富な大人は、子どもと違い、覚えることが少なくて済む。この緊張感のなさが、大人の記憶力を低下させている可能性があるかもしれない。

ということで、記憶力を強化させるには、まったく新しいことを始めるのも一案かもね、と先ほど開けた冷蔵庫をまた開けながらつまみ食い。

やっぱり大人って楽しい。
 

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