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「世界の一員としてのグローバル化の推進を」 建機工

冒頭、野路会長が参会者にお礼の言葉を述べたあと新年の挨拶をした。挨拶の概要は次のとおり。
「昨年は辛い年でありました。われわれ建機工の会員各社もご苦労をされたと存じます。今年は元気で明るい年になることを皆さんと一緒に期待したい。さて、われわれを取り巻く環境は建設機械の産業は長い目でみれば、まだまだ成長産業です。アジアをはじめ新興国のポテンシャルは大きいものがある。ここ3年ほどリーマンショック、東日本大震災、欧州の財政危機、最近では中国の急減速、超円高と、本当にショックばかりあるような3年半ではなかったかと思います。先の見通しをよく聞かれますが、なかなか読みづらく、先がどうなるか分からない時代になったかと思っています。しかし、われわれがやるべきことは変わりません。建機工として3つの課題をあげます。一つめは国内の復興需要を成し遂げなければならない。東北地方の復興を通じて将来、日本経済の再生に繋がるためにわれわれは努力していかなければと思います。特に建設機械は復興復旧にはなくてはならない機械ですので、皆さん、建設機械が足りないということのないように円滑な供給、あるいはアフターサービス、あるいは福島地域では除染の問題等ありますが、皆さんで知恵を出して、われわれはサポートしていきたいと思っています。二つめは昨年、節電・ピーク電力の抑制かと思います。われわれ建機工も国内生産拠点が多くありますが沢山のエネルギーを使っております。ぜひ皆さんで知恵を出しながらピーク電力の抑制に努めてまいりたいと思います。三つめは、なんといってもグローバル展開です。今年は国内市場はしばらく復興需要ですが、北米の市場も少しずつ回復軌道にのっております。新興国につきましては、まだまだ成長のポテンシャルが大きい。われわれ建機工も高い技術力をもっております。われわれの周囲には技術力の高いパートナーもたくさんいらっしゃいます。環境、安全をキーワードにして良い商品を開発し、全世界に供給する。そして海外市場で利益をあげて、その利益を日本に戻して研究開発を行っていくことが、よい商品をつくっていくという好循環を生む。そのように進んでいきたいと思っています。
工業会の経営のパラダイムの七つを一昨年上げましたが、この中で東北の復興を通じまして、よき企業・市民としての社会の貢献、節電・ピーク電力の抑制を含めて環境保護・省エネへの貢献、全世界へのグローバル展開をすることによって、世界の一員としてのグローバル化の推進、これらはわれわれ建機工の経営パラダイムにあります。これらを重点に皆さんと一緒に力を合わせて頑張っていきたい」
日本はネットワーク・技術力・資本力で優位

4枚刃インパクトミラクル制振ボールエンドミル「VF-4SVB」に小径サイズ追加 三菱マテ
三菱マテリアルツールズ(社長=滝沢俊夫氏)は、このほど三菱マテリアルが開発、製造する難削材加工に適した“4枚刃インパクトミラクル制振ボールエンドミル”「VF-4SVB」に新たなサイズを追加、販売を開始する。
販売の背景に、航空機部品などに多く用いられるステンレス鋼やチタン合金、耐熱合金などの難削材の加工において、高能率加工を行おうとするとびびり振動が発生し、問題となることがあった。この問題に対し、耐びびり性に優れた“4枚刃インパクトミラクル制振ボールエンドミル”「VF-4SVB」を商品化したところ、現場からは高い評価の声があがり、難削材小物部品の高能率加工に対応できる小径サイズを追加した。
「VF-4SVB」の主な特長は以下のとおり
(1) R切れ刃に不等カーブ形状を採用し、難削材や薄肉部品の加工においても、びびりを抑制し、高能率加工を実現する。
(2) 従来の4枚刃ボールエンドミルに比べ、底刃部分のチップポケットを大きく確保することにより、切りくず排出性を向上させている。
(3) 耐熱性に優れた”インパクトミラクルコーティング”を適用。高い皮膜硬さと耐酸化性、低い摩擦係数により、高精度・高品位加工を実現する。
●シリーズ名称:インパクトミラクル難削材加工用制振エンドミルシリーズ
●品名/型番:4枚刃インパクトミラクル制振ボールエンドミル VF-4SVB/4型番
●販売目標:1,000万円/初年度
●標準価格:(代表型番)VF4SVBR0100=13,200円(税込み 13,860円)、VF4SVBR0250 =15,100円(税込み 15,855円)
インパクトミラクル制振ラジアスエンドミル「VF-MHVRB」およびエムスターハイパワーラジアスエンドミル「MSMHDRB」サイズ追加 三菱マテ
三菱マテリアルツールズは、三菱マテリアルが開発、製造する難削材加工に適した“インパクトミラクル制振ラジアスエンドミル”「VF-MHVRB」と“エムスターハイパワーラジアスエンドミル”「MSMHDRB」に新たなサイズを追加、販売を開始する。
ジェットエンジン、発電機のタービンブレード、航空機機体の補強部等、軽量で高い強度や高い耐熱性が必要な部品には、ステンレス鋼、チタン合金、耐熱合金、といった、難削材が多用されている。これらのワークは、大きな隅R形状で設計されていることが多く、機械加工において大径で大きなコーナRを持った専用のラジアスエンドミルが必要とされている。同社は、異なるねじれ角を複合させた不等リード形状を持つ“インパクトミラクル制振ラジアスエンドミル”と、切削抵抗を低減させた独自の断面形状を持つ“エムスターハイパワーラジアスエンドミル”の2つのシリーズにおいて、ニーズが高い5mmおよび6.35mmの大きな隅R形状の加工に対応するため、φ16とφ20の大径サイズを追加した。
「VF-MHVRB/MSMHDRB」の主な特長は以下のとおり。
(1) びびりが生じやすい薄肉形状部品や、工具寿命が問題となる耐熱合金に対する高付加価値加工が可能な“インパクトミラクル難削材加工用制振エンドミルシリーズ”と、汎用性の高い”エムスターエンドミルシリーズ”の2つのシリーズより選択が可能。
(2) それぞれのシリーズで、φ16×R5、φ20×R5およびR6.35の3型番を標準在庫として追加することにより、お客様のご要望にタイムリーに対応する。
(3) 切れ味に優れたコーナR形状を採用したラジアスエンドミルであり、難削材の高能率加工が可能。
●シリーズ名称 :インパクトミラクル制振ラジアスエンドミルシリーズ、エムスターハイパワーラジアスエンドミルシリーズ
●品名/型番 :インパクトミラクル制振ラジアスエンドミル/VF-MHVRB;3型番、 エムスターハイパワーラジアスエンドミル/MSMHDRB;3型番(いずれも4枚刃)
●販売目標:1,000万円/初年度
●標準価格:(型番)VFMHVRBD1600R500 65,620円(税込み68,900円)、MSMHDRBD1600R500 41,330円(税込み 43,400円)
Mastercam 用工具/ホルダライブラリ「My Tool Box」上で日立ツール製工具ライブラリを提供開始!
ゼネテック(社長=上野憲二氏)は、3 次元CAD/CAM システム「Mastercam」専用の工具/ホルダライブラリ「My Tool Box」上で、このほど新たに日立ツール製工具ライブラリの提供を開始する。「My Tool Box」は、工具メーカー各社が販売する各種工具データを登録した「工具ライブラリ」と、ツーリングメーカー各社が販売する各種ホルダデータを登録した「ホルダライブラリ」を備えた弊社オリジナルのサービス。サービス開始以降定期的なラインナップの拡充を進め、現在までに工具メーカー5 社(オーエスジー、ダイジェット工業、日進工具、三菱マテリアル、ユニオンツール)、ツーリングメーカー3 社(MST コーポレーション、大昭和精機、日研工作所様)の主要製品ライブラリが同社の提供するMastercam 上で利用可能となっている。「My Tool Box」で公開されている工具ライブラリには、工具径や刃長、母材、コーティングなどの情報はもとより、各メーカーが提示する加工条件の推奨値が工具種別ごとに登録されている。ホルダライブラリについてもホルダ形状やテーパー規格などの情報がホルダ種別ごとに登録されているため、同社の提供するMastercam をお使いのユーザーは、工具やホルダの情報を新規に登録する必要がなく、ツールパスの作成に専念できるとメリットがある。なお「My Tool Box」は、同社の提供するMastercam 保守サービスにご加入いただいているユーザー向けにご提供するサービス。このほど提供を開始する日立ツールの工具ライブラリをはじめ、すべてのライブラリは同ユーザー向けの専用サイトからダウンロードの上利用できる。
日立ツール製エンドミルシリーズより26種322本を新たに提供開始
今回は第1弾として、「エポックミルスシリーズ」、「エポックGターボ」、「エポックパナシアシリーズ」、「エポックTHハードボールストロング」、「SD(DLC)コーティングシリーズ」より、計26種322本の工具ライブラリを公開。さらに、第2弾以降では「エポックパワーミルシリーズ」、「エポックエアロパワーミル」、「エポックラフィングエンドミル」、「エポックパーツフィニッシュミル」などの工具ライブラリを順次追加公開する予定。また、並行して同社では各ライブラリの追加に向けて様々なメーカーと協議を進めており、現在までに公開しているライブラリの拡充に加え、ドリルやスローアウェイ工具などの新しいナインナップも順次追加していく。今後も工具メーカー、ツーリングメーカー各社の協力のもと「My Tool Box」の一層の充実化と使い勝手の向上を図るべく、鋭意準備を進めていくとしている。
年頭所感(日本機械工業連合会/日本産業機械工業会/日本工作機械工業会/日本工作機器工業会)
グローバル競争に打ち勝つ戦略を構築し、実践していくことが重要
●日本機械工業連合会 会長 伊藤源嗣
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。皆様におかれましては、お気持ちも新たに新年を迎えられたことと存じます。年頭にあたり、平素より日本機械工業連合会にお寄せ頂いております皆様の暖かいご指導とご支援に対し、心より御礼申し上げます。
昨年は3月に未曾有の大災害となった東日本大震災が発生し、被災地は勿論、我が国経済にも大変深刻な苦難をもたらしました。現在、被災地においては、関係各位の献身的なご努力により、復旧・復興に向けての歩みが着実なものとなってきておりますが、他方では今回の震災関連の被害が甚大であったため、未だに不自由な生活を余儀なくされている被災者の方々や、事業活動の再開に困難を抱える企業の方々も、多々居られます。そうした方々の一日も早い復旧、更には復興を、心より念願する次第であります。
さて、我が国経済は、東日本大震災で寸断されたサプライチェーンの復旧に伴う生産の回復や震災の復興需要などにより、昨年7-9月期の国内総生産(GDP)は実質で前期比1.4%増、年率換算では5.6%増と1年振りにプラスとなりました。しかし、欧州の財政金融危機を契機とした世界経済の減速、歴史的な円高、エネルギー不安、タイの洪水など懸念材料も多く、景気の先行きが未だ不安視されております。政府におかれましては景気が再び悪化せぬよう、円高対策や第三次、第四次補正予算の早期執行など、確固たる対応を早急に講じて頂きたいと思います。
近年、我が国を巡る経済社会環境は、急速な少子・高齢化による人口減少が進む一方、新興諸国も加えたグローバル競争が激化するなど、非常に厳しい状況が続いております。これらの困難を乗り越え、今後の我が国の繁栄を確保するためには、政府、企業、国民が一丸となり、諸課題の解決に全力で取り組んで行く必要があります。政府には新成長戦略を早期に確実に実行するとともに、持続可能な社会保障制度の構築及び中長期的な財政健全化のために「社会保障と税の一体改革」を実現し、国民が安心できる社会システムを構築することが期待されています。
一方、企業には産業活動を活発化し、輸出の増大、国内産業の振興と雇用の確保を図ることが求められています。しかし、我が国の事業環境には、円高、突出した法人税、労働面や環境面の規制、経済連携の遅れなど、国内においてものづくりを続けていく上で大きな障害があります。これらが早急に改善されなければ、国内の生産や雇用、技術が丸ごと海外へ流出してしまう「好ましくない海外展開」が広がっていく心配があります。我が国企業が国の内外において対等な条件で海外企業と競争を行うことができるよう、国際水準の事業環境整備を早急に進めることが重要と考えます。
機械工業は我が国産業の中核として、未曾有の大震災からの復興を先頭に立ち推し進めるとともに、今後の活力ある経済社会実現の牽引役とならねばなりません。その実現のためには、我々企業はイノベーションによる新技術や新製品の開発、コストの削減、機械の安全性や省エネの徹底などにより、他国製品とは違う、国際競争力に秀でた製品を作り上げるとともに、世界各国を市場として、また、生産基地として、厳しいグローバル競争に打ち勝つ戦略を構築し、実践していくことが重要であります。優秀な人材の育成はその課題解決の鍵であり、国を挙げて取り組む必要がありましょう。機械工業はこれまで幾多の苦難を乗り越えて来ました。難局に直面した時にこそ、日本企業の底力が発揮できます。非常に厳しい道のりとなりますが、今回の困難も我々はかならず克服できると確信しております。
困難が続く中ですが、朗報もあります。我が国はTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉に参加することとなりました。世界で最も成長が期待されるアジア太平洋地域の需要を取り込むことは、我が国の活力ある経済成長の確保に欠かすことが出来ず、今回の政府の決定は国益を重視した的確な対応であったと思います。これを契機に日中韓FTA(自由貿易協定)や東アジアでの広域貿易圏構想も動き始めており、自由貿易は我が国成長の源泉であるため、その早期実現が非常に重要と考えます。また、先月のCOP17(国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議)では京都議定書が延長され、2020年に新たな法的枠組みを発効させることで合意されました。地球規模の問題である温暖化への対処は、世界全体で当たるべきであり、その体制への道筋がようやく付いたと申せましょう。我が国は議定書延長には参加せず、自主的削減努力を行うこととなりましたが、温暖化防止に対する取り組みは技術革新を生み、経済の成長を促す面もあり、積極的に臨むことが産業界にとって重要と思います。
一方、法律面では改正労働者派遣法で検討されていた「製造業派遣の原則禁止」が見送りとなりました。雇用の流動性確保に繋がるものであり、労働規制の足枷の一つが取り除かれ、雇用確保の面で中小企業も含めた企業経営に好影響を及ぼすものと予想されます。
日本機械工業連合会では、我が国機械工業の競争力を維持、発展させていくための課題に鋭意取り組んでおります。本年も、若手理数系グローバル人材の育成・教育調査、ドイツ機械工業連盟と協力した模倣品対策調査、機械の安全対策や標準化、レアメタル等の代替材料技術の開発など、会員各位の企業経営にとって密接なテーマを取り上げ、調査研究を進めるとともに、税制面での改善方策など機械業界の事業環境改善に向けた要望や政策提言などを行って参ります。
皆様には大変厳しい事業環境が続く中、ご苦労が多いことと存じますが、日本機械工業連合会は、新たな時代に求められるニーズに対応し、皆様と産業界の利益のために誠心誠意努力を続けたいと存じます。皆様の一層のご活躍とご健康を心から祈念申し上げます。
震災からの復興と日本の再生に向けて
●日本産業機械工業会 会長 日納義郎
昨年3月11日に発生しました東日本大震災により被災された皆様に謹んでお見舞い申し上げます。また、被災地の皆様のご健康と一日も早い復興を心からお祈り申し上げますとともに、復興活動にあたられている方々のご奮闘に敬意を表します。平成24年を迎えるにあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年のわが国経済は、年初より懸念材料を抱えつつも全体としては外需主導の景気回復の流れにあったと思われます。年明け以降に緩やかな増加基調を示していた生産や輸出も、大震災によるサプライチェーンの寸断や電力不足など大変厳しい供給制約に直面し、大幅に減少いたしました。
その後、大震災で深い痛手を負ったサプライチェーンが予想以上のスピードで復旧し、自動車産業を中心に生産が回復に転じるなど、わが国の7-9月期GDPは3四半期ぶりに増加いたしました。
しかしながら、夏場以降は新たな懸念材料として、欧州の財政問題を背景とした海外経済の減速や歴史的な円高の進行、タイの洪水被害の影響、今冬も続く電力不足への対応などが加わり、極めて厳しい状況に見舞われております。
私ども産業機械業界の昨年の受注は、大震災の影響により落ち込む中、製造業の底固い需要や電力供給不足への緊急対応、アジア新興国の需要等に支えられ、夏場にかけ総じて持ち直しつつありましたが、秋口以降、製造業の需要に陰りがみえ始め、さらに外需では中国向けなどで前年比マイナスに転じるなど、先行き不透明感が高まっております。
本年につきましても、欧州経済の混迷に伴う新興諸国を含めた世界経済への影響とそのリスクに対する警戒感が強まる中、円高や電力不足等の課題も抱えており、産業機械業界にとりましては厳しい受注環境が続くものと予想されます。こうした閉塞感を打破し世界の変化へ適応していくためには、国際競争力をより強化しアジアの成長を見据えたネットワークの構築に努め、ビジネスチャンスの一段とした拡大を目指し、果敢にチャレンジしていくことが必要であると考えます。
我々産業機械業界は、大震災後の供給制約を解消していく過程でも発揮された、日本の「ものづくり」の底力・現場力、品質へのこだわりやきめ細やかなサービスなど、世界に誇る独自性や強みを数多く保有しております。さらに、わが国は世界の成長センターであるアジアの一角を占めており、地理的な有利性にも恵まれております。
こうした強みを活かし関連産業と連携しながら、競争力の源である技術革新・技術結合等を強力に推進し、需要にマッチした供給体制を整え、グローバル展開と内需開拓の両面を戦略的に進めることにより、わが国成長力の強化に繋げ、大震災からの復興と日本の再生に貢献することが重要であります。さらに、より一層の省エネルギー性能に優れた製品を開発し、わが国のみならず世界に供給することで、経済成長と環境保全の両立に貢献するべく努力を継続してまいります。
政府におかれましては、歴史的な超円高の是正、TPPやASEAN+6など経済連携の戦略的推進、エネルギーの安定確保、大震災の影響を踏まえた新しい成長戦略の構築など、わが国の産業に前進していく力が備わるよう、強力に支援していただくことをお願いしたいと思います。
なお、皆様ご承知の通り、公益法人新法の施行に伴い、平成25年11月末までに、新たな法人への移行を完了しなければなりません。私ども産機工は、昨年9月の臨時総会において「一般社団法人」への移行を決議し、本年4月から新法人としてスタートすることとなりますが、社会から求められる使命と役割を積極的に果たしていきたいと考えております。
年頭にあたり考えるところを述べさせていただきましたが、関係各位におかれましては一層のご指導、ご協力をお願いしますとともに、皆様のご多幸を心からお祈り申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。
「飛竜乗雲」のごとく大きく飛躍する年に
●日本工作機械工業会 会長 横山元彦
平成24年の新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年は、日工会創立60周年という大きな節目の年に当たり、関係者一同万感の思いで過ごした一年でありました。
また昨年は、内外で予想だにしなかった事態が相次ぎました。取り分け、3月11日に発生した東日本大震災によって、わが国社会は、人的・物的に著しい被害を受けました。被災された皆様方、特に津波に襲われた地域の方々、原発事故で今なお避難を余儀無くされている方々に、心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
さて、昨年の工作機械業界を振り返りますと、毎月の受注額は、概ね1千億円を超すレベルを維持して順調な回復基調を辿り、直近11月までの受注額累計は、前年比37%増の1兆2,100億円となっております。
このうち、内需につきましては、一般機械や自動車を中心に緩やかに上向いているものの、歴史的円高に起因する国内需要産業の伸び悩みを背景に、その水準はピーク時の半分程度にとどまっております。他方、外需に関しては、好調なアジア市場に牽引されて、年間で過去最高額を更新する見込みとなっております。中でも、中国はわが国工作機械産業にとって、国内市場に次ぐ第二の市場として、一段と存在感を増しております。
このような中、本年の工作機械受注は、引き続きアジア市場を中心として、外需主導で底堅く推移するものと見込んでおりますが、欧米の財政危機などの懸念材料も多く、全体的に先行き不透明であります。この中で、受注環境の変化に機敏に対応しつつ、あらゆる受注機会を捉えるよう業界を挙げて頑張っていきたいと思います。
併せて、当工業会と致しましては、わが国工作機械産業が、技術やサービス等の質的側面においても世界をリードし、日本はもとより、あまねく世界の産業界に貢献することを第一義として、諸事業を展開していく所存であります。
このためには、まずは有為な人材が不可欠であることは言うまでもありません。当工業会では、次代を担う人材の確保・育成に向けて、産学の人材交流を積極的に推進するとともに、工作機械に関する社会的認知度の向上を図るべく、諸活動に注力して参ります。
わが国工作機械産業の持続的成長の実現に向けて、当工業会では、特に今後の拡大が期待される新興国市場について、製品の開発・供給から、アフターサービスに至る全ての面において、競合国との差別化を図り、総合的な戦略の構築に取り組みたいと存じます。
翻って、中長期的な観点では、今後、業界各社が採るべき方策の一助とするため、産学官の英知を結集して、わが国工作機械産業が克服すべき課題と目指すべき方向を明らかにし、本年5月を目途に、「工作機械産業ビジョン2020」として、とりまとめることとしております。
さらに、今年はJIMTOFの開催年に当たります。主催者として従来にも増して盛大かつ国際色豊かな展示会を目指し、その成功に向けて、会員各位とともに万全を期したいと考えます。
このほか、工作機械の標準化活動の強化、次世代技術開発の促進など、幅広い事業を展開するとともに、本年4月からの一般社団法人への円滑な移行に向けて鋭意準備を進めて参ります。
関係各位には、更なるご指導とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
本年は辰年です。わが国工作機械産業が「飛竜乗雲」のごとく大きく飛躍することを祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。
本格的なアジアメーカーとの競合時代に突入
日本工作機器工業会 会長 寺町彰博
あけましておめでとうございます。
年頭に際し、所見を述べさせていただきます。
昨年の世界経済は、前半においては、新興国の成長が世界経済を牽引する中、先進国でも経済は緩やかな回復基調となっていました。しかしながら3月11日に東日本大震災が発生し、日本経済は非常に大きな被害を受けました。特に製造業においては、直接的な被害に加えサプライチェーンの寸断により、多くの企業が操業停止や減産を余儀なくされました。
後半においては、新興国では経済成長が鈍化、米国では財政関連の混乱が発生、そして欧州各国ではギリシャに端を発する債務問題が深刻化するなど、世界経済には不安定な要素が増加いたしました。加えてタイでは大規模な洪水が発生し、製造業はまたもサプライチェーンの混乱に見舞われました。
日本の製造業を取り巻く環境といたしましては、リーマンショックを契機として、新興国が世界経済の牽引役、すなわち重要な消費国となっていました。そのような中、サプライチェーンの見直しの必要性や、東日本大震災を契機とした電力コストの上昇、加えて為替の円高は、日本の製造業の海外シフトを加速させています。さらに他の先進国においても同様のシフトが見られる中、新興国は生産国としてもその存在感を増しつつあり、日本の部品製造業にとっても、いよいよ本格的なアジアメーカーとの競合時代に突入したと言えます。
私たちは、今後このような厳しい競争環境下でビジネスを遂行していかねばなりません。しかしながら、震災後に日本の人々が見せた復旧・復興に向けた強い信念と団結力をもってすれば、日本の部品製造業は引き続き世界の製造業の発展を牽引していくことができると信じて疑っておりません。従いまして、当工業会といたしましても、会員の皆様とともに強い信念を共有し、新たな顧客にとって価値ある製品を開発し日本の製造業の発展に寄与できますよう、積極的な活動を展開してまいる所存です。
なお、当社団法人日本工作機器工業会は、本年4月より一般社団法人として新たなスタートを切る予定です。事業環境が激しく変化する中、既成概念にとらわれず、公益法人としての目的を達成すべく活動を進めてまいる所存ですので、今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。
最後になりましたが、会員企業様の益々のご発展と皆様のご健勝とご多幸を心より祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。
年頭所感(日本小型工作機械工業会/日本工具工業会/超硬工具協会/日本金型工業会)
多様化、細分化、多層化が進行する中にチャンスはある
●日本小型工作機械工業会 会長 長瀬幸泰
2012年の年初に当たりまして、ご挨拶申し上げます。
旧年中は、当工業会に対しまして格別のご厚情とご高配を賜り誠に有り難う御座います。
東日本大震災や記録的な豪雨をもたらした台風、更にタイの大洪水による歴史的な大被害に遭われました皆様、企業様には衷心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧、復興をお祈り申し上げるばかりです。
本年は、昨年に引き続き、激動と混沌とマダラ模様の一年になるのではないかと考えております。あらゆるもの、事柄が一言ではくくりきれない多様化、細分化、多層化が益々進行する年であると思います。同じ経済圏でも良い国とそうでない国、同じ業界でも業績好調な企業とそうでない企業がないまぜに存在し複雑な相互作用によって難しい対応が求められます。ソブリンショックなどの深刻な問題もありますが、同時にこのような状態は、誰にでもチャンスのある状態であることを意味致します。当工業会は、このような時代の大きな変化に対応すべく、「人財の育成」と「会員相互の信頼の構築」を重視した活動を行う一方で『未来創成委員会』を立ち上げ、一年かけて今後の当工業会のあるべき姿を模索致して参りました。多くの方の英知と共感を基に本年は一定の方向性の確立と具体的な行動のスタートの年とさせて頂く所存で御座います。
何卒、倍旧のご指導、ご鞭撻を賜ります様お願いを申し上げます。
工具はモノづくりの鎹(かすがい)
●日本工具工業会 理事長 増田 照彦
ちょうど一年と少し前の初冬、ひょんなことから「鎹」という漢字は「かすがい」と読むことを知りました。「かすがい」はホッチキスの針のような、そっけなく単純な形状なのに「仲を取り持つ」「繋ぎ合せる」という大事な機能を果たしていることに魅力を感じました。そんなふうに生きたいものだし、役にたちたいものだと、2011年の年賀状には押上にある馴染みの長屋茶房の絵に加え一文字「鎹」と記しました。
その時には「鎹」の心もちで一年が乗り切れるし乗り切ろうと考えておりましたが、まったく知らぬが仏で、それが3月11日以降は世の中が「絆」一色になりました。
理不尽な複合災害時には、お客様へのご迷惑を最小限にと、のたうちまわりながらも対応し、夏の節電もなんとか乗り切りました。私たちの主力産業である自動車業界も震災影響を取り戻すべくフル生産を計画されていたことから、景気も順調な回復を辿るに違いない、何か流れを変えるひとつの好機にしたいなどと市場が自信を取り戻しつつありました。
ところが文字通り、降ってわいたタイの洪水がサプライチェーンの寸断をひきおこし、自動車産業はもとより、電気、機械、素材と幅広い産業に悪影響を与えることになりました。そして為替においても、欧州ユーロ圏の信用不安からくる円の独歩高が際限なく進み、史上最高値を更新するなど、企業収益を押し下げ、海外生産の一層の加速による国内産業の空洞化が心配される昨今であります。よくもまぁ次から次へとあらゆる課題が私たちの試練のネタになるものだと呆れるほどやってくるものです。
そんな状況下、当工業会は平成23年度の生産額を昨年度に続いて1000億円を超えると見通しました。なかなかしぶとい存在感であります。
新年度になれば、各産業にて昨年度来の作り損ねた挽回生産が始まり、秋にはJIMTOFが「匠の技と先端技術の融合」というテーマで開催されます。高度な熱処理技術、優れた材料技術と最先端のコーティング技術を生かしたかけがえのない商品をお客様に提供することで社会に貢献してゆきたいと考えております。
環境対応については温暖化、廃棄物対策、化学物質管理に取り組んでおりますが、前年度実績をベンチマークにして第二次環境自主行動計画を策定し取り組んでおります。
そしていよいよ来年5月には世界切削工具会議(WCTC)が京都で開催されます。現在、超硬工具協会と共同で実行委員会を立ち上げ、準備を開始しました。あらゆる難事から見事に立ち直った元気な日本を世界にお見せできるよう魅力的なプログラムを提供してゆきたいと考えております。
昨年は「絆」に意識が集中しましたが、あらためて「鎹」を想い起こし、お客様、商社様と「かすがい」。超硬工具協会とも「かすがい」、当工業会会員の皆様同士で「かすがい」、そもそも工具はモノづくりの「かすがい」なのでありました。本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
品質と日本ブランドの強みで国際競争力を維持
●超硬工具協会 理事長 田中啓一
謹んで新年のお慶びを申し上げます。
昨年を振り返りますと、年頭においては、2008年のリーマンショックを乗り越え、日本経済にも、ようやく明るい陽射しが射すものと思っておりました。
しかしながら、3.11の「国難」ともいうべき、東日本大震災を経験いたしました。日本国民は総力をあげ、復興に邁進してきましたが、まだまだその傷跡は癒されておりません。
また、追い打ちをかけるように、10月にタイにて大洪水が発生し、洪水自体は終息を迎えたものの、自動車関連を主として部品調達等、我が国の産業に大きな影響がでており、生産活動の全面的な回復までにはもうしばらく時間がかかると思われます。
世界経済は、リーマンショック以来、世界経済を牽引する地域や国の存在が無い状況となり、さしもの中国市場も伸び率の鈍化がみられ、ヨーロッパの一部地域の政府債務危機は、更に景気が下振れするリスクとしてマイナスの要素をもっています。
日本経済は、東日本大震災の影響に端を発して依然として厳しい状況にありますが、今年は緩やかに持ち直すことが期待されています。具体的には、個人消費については供給量の回復による自動車販売、自粛ムードの後退による旅行等のサービス消費が持ち直してくると考えられます。設備投資については震災後に手控えられていた投資活動が再開され、震災からの復旧需要が見込まれています。
我々製造業では、東日本大震災の影響で一旦大きく落ち込んだ生産活動が、サプライチェーンの立て直しや各種の政策効果等を背景に徐々に回復しました。夏場の電力不足も節電の工夫等により何とか乗り切り生産活動を後押ししました。情報通信部門に停滞はあるものの、国内生産に占めるシェアが高い業種では、前向きな動きが見られ、緩やかながら景気の持ち直し傾向が続くことが期待されています。
当協会において、超硬工具出荷額は、2011年度上期は1,453億円(実績)でありました。2011年度下期は、国内外の経済、産業指標は先行き不透明感があるものの、工作機械、自動車、産業機械産業と同様に、主として中国をはじめとするアジア地区の新興国需要に支えられると予想されます。2011年度通期の出荷額を、不透明な要素は見られるものの、3,020億円(見通し)と策定いたしました。しかし、この見通しは、ピーク時でありました2007年度の3,572億円の84.5%であり、まだまだ「道半ば」という思いであります。
当業界の製品主原料であるタングステン(APT)価格は、10㎏当たりの単価が昨年末時点で450ドル前後と、依然として高止りを継続しており、主要生産国の統制等により多少のぶれはあるものの、急激に価格が下降するとは考えられません。そのような状況の中で、我々の使命は、弛まぬ技術革新により、さらに製造原価を抑え、その品質と日本ブランドの強みでもって国際競争力を維持することにあります。
また、理事長としてお願いをしてきましたが、企業の責務である「コンプライアンス」を最優先とし、業界全体がお互いに切磋琢磨し、共に栄えていかねばなりません。
時代は、我々に新たな環境とチャレンジの場を提供します。
本年も一層のご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。最後になりましたが、皆様のご多幸とご発展を心よりお祈り申し上げ、新年のご挨拶といたします。
生き残りをかけてあらゆる諸方策を駆使
●日本金型工業会 会長 上田勝弘
謹んで平成24年度の新春を迎えてのご挨拶を申し述べます。
会員の皆様も引き続き厳しい経営環境を耐えしのぎ心新たに新春を迎えられた事と存じます。
昨年は天災、人災、経済災という複合災害に見舞われた戦後最大の日本列島受難の年であったと思います。一日も早く被災地の復興が進展する事を切に願っております。しかしながら日本の〝ものづくり産業〟特に我々金型産業は、引き続き大手ユーザーの海外進出が止まらず、受注額が大きく減少し続けております。超円高現象も長期化するものと思われます。
また、金型の受注コストも人件費、電気、材料、輸送費、法人税率等々、アジア諸外国に比べてすべて高く、まるでハンディキャップのあるゴルファーがスクラッチで勝負するようなものですから、基本的に勝ち目はありません。品質レベルで同等クラスの金型は海外調達が多くなっています。
我々がこれからの生きる道は、①自社の得意技術を強くしていくこと ②営業力を強化すること ③海外進出する体制を作り上げること ④他社との連合を考え企業力を強くすること ⑤国内の人材の育成や海外との人的ネットワークを構築すること ⑥中小企業に対する補助、支援制度を効果的に活用すること ⑦国内外のユーザー等の情報を最大にキャッチしながら経営戦略を立てることなど、色々な諸方策を駆使して頂きたいと思います。
社団法人日本金型工業会は、会員の皆様の身近に発生する取引上のトラブルや相続や知的財産権問題、経営の問題等にもお応え出来るべく、経済産業省との連携を強めて頑張る所存でありますので、会員の皆様方も一体となって金型工業会活動を盛り上げて頂く事を期待しております。
年頭所感(日本工作機械輸入協会/日本フルードパワー工業会)
地球温暖化対策としての「省エネ技術」・「水圧技術」等の開発は喫緊の課題
●日本フルードパワー工業会 会長 宮内壽一
新年明けましておめでとうございます。
平成24年の年頭に当たり一言ご挨拶を申し上げます。
昨年3月の「東日本大震災」に加え「東電福島原発事故」の発生から一時は大混乱したわが国の経済環境は、「超円高問題」・「エネルギ―問題」・「海外経済の下振れ問題」等の課題はあるものの落ち着きを見せており、成立した第1次・第2次及び本格的な第3次の補正予算の早期成立・執行により、被災地における遅れ気味の復旧・復興を促進し、一日も早い経済環境の好転を図ることが望まれます。
ところで昨年のわが国の経済は、年初より比較的堅調に推移しておりましたが、3月の「東日本大震災」と「東電福島事故」の発生により、サプライチェーンが寸断された産業界は大きな打撃を受け、また、「東電福島事故」に伴う「電力危機」も加わり、わが国の経済環境は、未曽有の危機に見舞われました。こうしたなかで被災地はもとより、いち早く復旧・復興計画を進めた産業界の努力により7月頃より立ち直りの気配を見せた景気は、この夏、日本全体に広がった「節電要請」も何とか乗り切り、その後は明るさも見え始めておりました。事実、11月に内閣府が発表した本年7‐9期の実質GDP速報値は、前期比1.5%増で年率換算では6.0%増と4四半期振りにプラス成長を遂げました。しかしながら直近の日銀の景気判断は、欧州の債務問題を大きなリスク要因と見て「景気は持ち直しの動きが続いているものの、海外経済の減速の影響などから、そのペースは緩やかになっている」とトーンダウンさせております。
こうしたなかで私どもの業界動向を見ますと、昨年前半の出荷状況は比較的堅調に推移しましたが、10月以降一部に鈍化傾向も見られる等厳しさが増してきております。私どもの会員企業においても下期の業績予想を下方修正する等厳しい対応を取っております。これは欧州における債務問題や中国をはじめとする新興諸国の経済の低迷さらにはタイにおける洪水問題等「海外経済の下振れ」に加え高止まりしている「超円高問題」今後の「エネルギー問題」などに起因しており、先行きの経済環境を見るとき不透明感は払拭できず今後とも慎重に対応する必要があると考えております。
一方、先に政府においては、懸案であったTPP交渉に参加する旨決定し、各国との交渉に入ることとなりました。カナダ・メキシコも参加を表明するなど発展する環太平洋諸国の需要を取り込むためにも早期の協定参加が望まれます。さらに今後の経済環境を見ると、平成23年度の補正予算の早期執行や平成24年度予算の年度内成立等適切な経済運営が望まれるところです。
フルードパワー業界は「モノづくり」を支える重要な産業であり、今後とも大きな成長が期待されております。グローバル化への対応や地球温暖化対策としての「省エネ技術」・「水圧技術」等の開発は喫緊の課題です。また、業界としては厳しい経済環境のなかでも健全な競争と協調のなかで共に発展してゆくことが望まれます。
いずれにいたしましても各需要業界の皆様方には更なるご支援、ご鞭撻をお願い申し上げ新年のご挨拶とさせていただきます。
新しい需要分野に対応した輸入工作機械の導入を図り日本のものづくりに貢献
日本工作機械輸入協会 会長 千葉 雄三
平成24年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
旧年中は、当協会の事業活動にご支援・ご協力を賜りまして誠に有難うございました。
平成20年秋のリーマン・ショックによる世界的不況からようやく抜け出して、本格的な景気回復に入りかけた平成23年3月の東日本大震災によって、日本経済は大きな打撃を受け、更に、歴史的な円高、欧州の財政危機、タイの大洪水が追い討ちをかけて、停滞感と不透明感を増しました。
しかしながら、アジアにおける堅調な需要により日本の工作機械メーカーの受注額は、日工会の発表によれば、昨年10月末の時点で前年同月比で40.2%増となる1兆982億円に達し、年初に予想した年間受注額1兆1千億円を大幅に上回る1兆3千億円超になった模様です。内訳は概ね、外需が9千億円(69.2%)、内需が4千億円(30.8%)程度とされています。
一方で、円高、電力不安、高い法人税、経済連携協定(EPA)への取組みの遅れなどから、日本企業の海外展開が加速されており、日本のものづくりの空洞化が問題となっています。
そのような背景から、円高基調が輸入工作機械の販売に追い風とはならず、輸入統計数値にはまだ受注回復の兆しはありません。
昨年1年間のドライエッチングマシンを除く切削型工作機械の輸入額は、1月から10月までの輸入通関金額累計から予測して、前年比約41.5%増の434億円程度になったと思われ、過去最高であった平成18年の輸入額770億円から43.6%減少したことになります。
一方で、測定機器・検査機器を除く、コンポーネント機器・工具・ホルダー等の周辺機器の受注は、いずれも過去のピーク値の90%程度まで回復しました。
昨年の9月には、ドイツ・ハノーバーで開催された「EMOハノーバー2011」へ、例年のように輸入促進ミッションを派遣し、各国の工作機械工業会およびメーカーとの交流を図ってきました。3年ぶりに復活した「工場見学コース」には19名が参加して、ドイツ・ミュンヘンとチェコ・プルゼンの工作機械メーカーを訪問いたしました。また、輸入協会の活性化を図るために「企画委員会」を再構築して、会員企業から約20名の企画委員が参加して毎月1回の企画委員会を開催して、会員同士の相互理解と親睦を深めるべく活動しています。
今年は、9月10日(月)から15日(土)まで、シカゴショー「IMTS2012」が開催されます。今年も恒例の輸入促進ミッションを派遣して、最新技術を活用した工作機械と周辺機器を発掘することにしていますので、多数の皆様にご参加いただきたいと思っております。
また、国内最大のイベントとして、11月1日(木)から6日(火)まで「JIMTOF2012」が開催されます。
今回は会員企業から過去最多となった「JIMTOF2008」に次ぐ537小間の出展申込みがあり、輸入工作機械の復活に対する会員各社の意気込みが伝わってきます。
厳しさの続く市場環境において、当協会は新しい工作機械の需要分野とされるエネルギー・医療・環境対応・航空宇宙関連産業における加工方式に対応した、優秀な輸入工作機械と周辺機器を発掘してその導入を図ると同時に、海外メーカーと一体になったサービス体制を構築することによって工作機械の輸入拡大を図り、バランスのとれた業界の発展と日本のものづくりに貢献できるように努力していく所存です。
最後に当協会の会員各位ならびに業界関係者の皆様にとって、今年が最良の年となりますように祈念して新年のご挨拶とさせていただきます。
年頭所感(日本建設機械工業会/日本電機工業会/日本冷凍空調工業会)
日々の継続的な改善活動により現場力を強化していくことが重要
●日本建設機械工業会 会長 野路國夫
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
昨年の世界の建設機械の需要は、中国では政府による金融引き締め政策の影響により減少したものの、その他の市場では堅調に推移し、鉱山機械分野では特に好調に推移しました。
しかしながら、為替がドル、ユーロ、人民元に対し大幅な円高で推移していることに加え、欧州危機の世界経済への波及が懸念されており、見通しは極めて不透明です。想定外の事態にも柔軟に対応できるように、日々の継続的な改善活動により現場力を強化していくことが何にも増して重要です。
日本国内におきましては、昨年3月11日に東日本大震災が発生し、東北および北関東を中心に甚大な被害をもたらしました。被災された皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。
平成23年度第3次補正予算による震災の復興工事が本年よりいよいよ本格的に始まります。震災の復興作業は長期にわたると予想されておりますが、会員各社は復興に不可欠な建設機械を製造し、迅速に被災地に届け、これらの機械が現場で稼働し続けるよう保守・サービスに努めてまいります。
さて、当工業会は、昨年9月27日をもって名称を「一般社団法人日本建設機械工業会」に変更いたしました。ただし、当工業会が掲げる設立理念「調和と発展による社会への貢献」ならびに「共生と競争」は不変です。そして、①良き企業市民としての社会への貢献。②ステークホルダーとの共存共栄。③公正・透明な競争と適正な取引の推進。④世界の一員としてのグローバル化の推進。⑤安心・安全の追求と人間中心の経営の志向。⑥環境保護、省エネルギー、省資源の推進。⑦新しい商品および分野の開拓。の7項目からなる「経営パラダイム」に基づき会員各社がお互いに切磋琢磨しつつ、一方で連携を強めることにより、建設機械業界の更なる発展のみならず、実り豊かな社会の実現にこれからも貢献してまいります。
最後になりましたが、皆様にとって、すばらしい一年になりますように心より祈念いたします。
今年は日本が再出発する重要な年
●日本電機工業会 会 長 下村節宏
新年、あけましておめでとうございます。
皆様方には、お健やかに新年を迎えられたことと、お慶び申し上げます。
会員の皆様、経済産業省はじめ関係省庁・関係団体の皆様方には、平素より、日本電機工業会の活動に格別のご支援とご厚情を賜り、厚く御礼申し上げます。
平成24年の年頭にあたり所感の一端を申し上げ、新年のご挨拶に代えさせて頂きたいと存じます。
昨年の東日本大震災そして福島第一原子力発電所の事故から、はや9ヶ月あまりが過ぎ去りました。今なお、多くの被災された方々、避難を余儀なくされておられる方々が、懸命なご努力を続けておられます。私たちも、この惨禍を決して忘れることなく、また風化させることなく、一日も早い復興が実現するよう願っております。
さて、昨年の日本経済は、リーマンショックの影響からようやく立ち直り、回復の兆しをみせておりましたが、3月11日の東日本大震災により、極めて深刻な影響を受けることとなりました。震災直後、様々な社会インフラの喪失、サプライチェーンやロジスティックスの崩壊など、供給面で多くの制約が生じ、生産活動が大幅に低下を致しました。しかし、企業の生産再開に向けての懸命なご努力や、関係方面の昼夜を分かたぬご尽力により、震災後の復旧は、予想以上のスピードで進展致しました。しかし、我が国経済は、今なお、円高、株安、デフレ基調が継続しており、依然として足踏み状態が続いております。
一方、ギリシャの財政破綻に端を発したEUの金融不安は、何とか当面の危機は回避できたものの、いまだ、不安定な状況から完全に脱したわけではありません。加えて、米国の経済不安、中国の成長鈍化など、懸念材料は、まだまだ存在しており、今後も世界経済の動向には、充分注意を払う必要があります。こうした内外の状況を打破するためには、一刻も早く、成長への基盤を固め、新たな一歩を踏みださねばなりません。成長なくして繁栄はありません。
世界経済が低迷する中、わが国の強いリーダーシップの発揮を期待致します。
昨年の電機業界の生産状況は、当初、3月の東日本大震災の深刻な影響が懸念されましたが、幸い、白物家電が、昨年に対し僅かに減少したものの、重電が、電力用機器を中心に好調を保ち、上期全体の生産額は、昨年を上回ることとなりました。一方、上期の白物家電の国内出荷額も、省エネ製品の積極購入などがあり、昨年を上回る結果となりました。今年は、電力用機器に需要増が期待されるものの、輸出中心の汎用品需要の停滞、白物家電の国内需要の一巡、タイの洪水の影響など、重電、白物家電共に伸び悩みが懸念されます。今後の市場動向をしっかり見極めながら対応してゆく必要があります。
さてJEMAは、重電、原子力、新エネルギー、白物家電といった広範な産業分野の振興、発展、環境保全、国際標準化などの共通課題、そして、国の様々な政策課題に電機業界挙げて取り組んでおります。今年は、更に多くの厳しい課題に取り組むことになると思われます。
まず重要なのは、エネルギー問題であります。
ご案内の通り、現在、政府内で『エネルギー基本計画』の見直しが進められております。今後この中で、これからのわが国の新たな電力の供給構造が示されるものと思います。資源が極めて乏しいわが国は、厳しい条件の下で、新たな成長を遂げなければなりません。日本の国情を踏まえ、将来の方向を誤ることなく、原子力発電も含め、適切かつ実現可能なエネルギーのベストミックスの構築に、関係者のご尽力を切にお願い申し上げます。私共電機業界も、電機産業が有する多くの優れた技術や、これまで培ってきた高品質で高度なものづくり、数々の豊富な知見を総動員して、わが国のエネルギーの安定供給に貢献してゆく所存であります。
原子力発電については、現在そのあり方を含め色々な角度から議論が重ねられておりますが、安全性は全てに優先されることは言うまでもありません。今も現地で懸命な収束活動に携わっている方々に、敬意を表すると共に、今回得られるであろう様々な知見が、我が国はもとより、世界の多くの原子力発電国にとっても貴重な情報として共有され、更なる安全性の確立に生かされてゆくよう願っております。
一方、エネルギーの消費面でも、重電、白物家電共に、更なる高効率化、省エネ技術の進展、高度化が求められております。こうした課題にも、世界をリードする先進技術や、「ものづくり」を一層強化すると共に、低炭素技術・省エネ製品の開発を促進して、わが国のCO2排出削減に貢献すると共に、低炭素社会の実現に向けて取り組んで参ります。
次に地球温暖化対策であります。
電機・電子 4 団体では、CO2排出量削減の自主行動計画を着実に推進しております。2010年度実績は、実質生産高CO2原単位が、1990年度比で47%の改善となり、3年連続で目標の35%改善をクリアー致しました。
一方、昨年のCOP17では、我が国は、京都議定書の単純延長に反対を表明したものの、世界の大勢は、京都議定書の延長を選択しました。今後続く逆風の中でも、決して軸ぶれすることなく、世界のすべての主要排出国が参加する公平かつ実効性のある、新たな国際枠組みの構築に向けて、日本の強いリーダーシップの発揮を切望致します。
三つ目は、国際標準化の推進であります。
我が国経済の低迷を打破するためには、新産業の創出、拡大と、新時代にマッチした事業の新たなグローバル展開が不可欠であります。新興諸国の経済成長は著しく、エネルギー需要も極めて旺盛であります。また同時に世界の多くの国々で、地球環境保全や低炭素社会の構築への取り組みも加速されつつあります。こうしたことを踏まえると、我が国の電機産業には、まだまだ国内外に更なる成長の芽は広がっており、グローバルな事業機会を積極的に取り込んでゆくことが成長の鍵といえます。
また、近年、世界の国々で新しい概念の広範な電力の需給システム、いわゆるスマートグリッドへの取り組みが進められています。我が国でも官民の力で、様々な研究、実証事業が展開されています。JEMAも、こうした動きに対応して、関係する会員企業の皆様と共に、与えられた役割に取り組んで参りたいと思います。
グローバル市場において、わが国の優れたシステムや技術が高い評価を得て、日本の市場優位性を向上させるためには、我が国技術の国際標準化が極めて重要であります。国を挙げてスピード感を持ち、日本の標準が世界をリードする国際標準化戦略を推進するために、電機業界としても、官民力を合わせて、しっかり取り組んでゆく所存であります。
わが国は、昨年ハワイで行われたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)において、TPP交渉参加に向けた協議に入ることを表明しました。
私ども電機業界も、我が国が、他国に遅れをとること無く、しっかりと国際競争力を高め、わが国の優れた技術や高品質な製品を、グローバル市場に浸透させるには、経済連携など国際的な通商環境の構築は極めて重要であると認識しております。将来に亘って、我が国が、世界の大きな経済的枠組みの中で成長を遂げられるよう、TPP参加実現に向け、関係各位のご尽力をお願い申し上げます。
今年は日本が再出発する、極めて重要な年になると思います。
内外を取り巻く情勢は依然として厳しく、先行きの不透明感は拭い去れませんが、是非、関係省庁や関係機関とも密接な連携を図り、会員の皆様と一丸となってこの閉塞感を打破し、新たな成長軌道を切り開き、電機産業の発展と輝かしい日本の再生に向けて、邁進して参りたいと思います。
最後になりましたが、この一年の皆様方のご発展と一層のご活躍を祈念致しまして、私の新年のご挨拶とさせて頂きます。
本年も、どうぞよろしくお願い致します。
全世界で地球環境問題への取り組みはさらに強化される
●日本冷凍空調工業会 会長 藤原克彦
年頭にあたり謹んで新春のご挨拶を申し上げます。
旧年中は、皆様より当工業会に対し格別なるご指導、ご鞭撻、ご支援を賜り、心より厚く御礼申し上げます。本年も宜しくお願い申し上げます。
平成23年を振り返って
平成23年の世界経済を振り返りますと、昨年は3月の東日本大震災や夏場以降のタイの水害に端を発する世界的サプライチェーンの混乱、また、ギリシャ財政危機から始まったEUに端を発する金融不安の世界的広がりなど、グローバルに連動する事象が次々に発生しました。特に欧州の経済は低迷しましたが、一方、新興著しい中国や後続のインド・ブラジルなどは先進国との経済の連動性が高まりつつある中でも堅調に経済成長を続けております。
日本経済におきましては、震災直後の落ち込みからは急回復、鉱工業生産が震災前の水準まで回復し、消費マインドも改善してきております。しかし、産業活動を取り巻く環境は超円高基調やレアアースをはじめとする輸入原材料の高騰など非常に厳しく産業界は大きな影響を受けました。
こうした環境の下、平成23年度上半期の当工業会関連製品では家庭用エアコンが節電志向の高まりで、より省エネ性が向上している最新モデルへの買い替え需要が促進され、猛暑で過去最高の出荷となった前年を更に上回る実績となりました。一方、震災によるサプライチェーンの混乱や電力事情が影響して、カーエアコンや家庭用ヒートポンプ給湯機は低迷する結果となりました。
上半期の国内向け出荷状況を当工業会の自主統計ベースで製品別に申し上げますと、家庭用エアコンが542万台(105%)、業務用エアコンが42万台(112%)、ガスエンジンヒートポンプエアコンは10千台(130%)、食品の流通・保存に関わる冷凍冷蔵ユニットが17千台(101%)、冷凍・冷蔵ショーケースが145千台(109%)と前年を上回る状況となっております。一方、カーエアコンが194万台(79%)、家庭用ヒートポンプ給湯機が254千台(93%)と前年を下回っております。
総計としては上期の生産・出荷額は震災影響を受けた製品が全体を押し下げる形となりました。
具体的には、上期生産額が9197億円(前年比96.5%)同じく出荷額は9768億円(前年比92.5%) です。輸出につきましては、1888億円(104.2%)となっております。
平成24年を迎えるにあたって
平成24年の世界経済は、依然継続している欧州の金融不安、米国などでの景気の先行きの不透明感が存続し、先進国においての実質GDPは低成長になる見通しです。新興国経済は堅調な内需を背景に景気の拡大は続くものの、先進国の景気の鈍化に伴う輸出の減少などにより経済成長は減速するものと思われます。
日本国内においては、復興需要が顕在化し、経済成長を押し上げることが期待される一方、前年のサプライチェーンの混乱や超円高基調を回避するための生産拠点の海外移転、海外経済の減速傾向の影響などマイナス要因が存在しています。震災後のエネルギー政策見直しの動きについても、当工業会の製品・機器は密接に関わりがあり、慎重に動向を見守りたいと思います。
また、地球環境問題への全世界での取り組みは、更に強化されるものと思います。製品に冷媒を扱う当工業会としては世界動向を継続して注視し、対応して参りたいと思います。
このような環境のもと、平成24年の当工業会の施策につきましては、以下の3点について特に重点をおきたいと考えます。
Ⅰ.環境問題への適切な対応
Ⅱ.事業のグローバル化への対応
Ⅲ.検定制度の充実
Ⅰ.環境問題への適切な対応
国際的に温暖化効果ガスの大幅な削減が求められており、福島原発の事故に伴い、発電量の不足や火力発電所の比率が増加するなどの背景から、エネルギー政策は根本的に見直される可能性があり、更なる省エネの要求が強まることも予想されます。また、HFC冷媒はオゾン層の破壊はしませんが、温暖化係数が高いものがあり、これらのHFC冷媒の排出による地球温暖化問題は近年、急浮上してきております。これらの諸問題は当業界事業に大きく影響を与えることは必至であり、的確に対応していく必要があります。そのために以下の取り組みを推進して参ります。
(1)HFC冷媒の漏洩削減と回収
「HFCの責任ある使用原則」の精神に則り、行政の協力を得ながら、使用時の冷媒漏洩を削減し、整備時・廃棄時の冷媒回収の向上を引き続き進めます。平成23年度には冷媒の漏洩点検・管理制度の構築を念頭に漏洩防止実証モデル事業を開始したところであり、今後はこれを法整備へつなげていきたいと思います。また、これらの事業の中核を担う組織として平成23年10月には「一般財団法人 日本冷媒・環境保全機構(JRECO)」を新たに設立し、従来3団体にて共同運営していた冷媒回収推進・技術センターの事業を移管しました。引き続き、冷媒の回収量向上に向けた実行性ある具体的取り組みを推進していくための強化を図って参ります。
(2)次世代冷媒代替技術の検討
温暖化係数の低い次世代冷媒の開発は当業界の大きな課題です。次世代冷媒の候補には微燃性を持つものが多く、これらの微燃性冷媒の使用に対する安全性評価を産学で研究を推進するなど、次世代新冷媒・代替技術の可能性を積極的に追求して参ります。
(3)エネルギー消費の削減と高効率機器の開発・提供
製品・機器のエネルギー消費の削減のため、当工業会としては引き続き、高効率の機器を開発し、それらの情報を常に提供するという理念のもと、活動を行って参ります。併せて、今後省エネ法の対象となる製品・機器についても的確に対応するとともに、製品・機器に課せられるエネルギー消費目標が適切なものとなるよう、計画策定に協力して参ります。
Ⅱ. 事業のグローバル化への対応
国際規格は国内規格と密接に関係していると同時に、国際化した製品にとっては従来にも増して重要になってきています。特に昨今ではエアコンの性能評価方法や、冷媒の安全に関する規格など、冷凍空調分野の省エネや環境に関連する国際規格は多岐に亘っており、当工業会を含む様々な団体で検討が進められています。当工業会としては、業界の意見を的確に反映していくために、迅速かつ計画的な行動及び将来を見据えた地道な国際的活動も不可欠であると考え、業界意見を取り纏め、行政との連携も図りながら活動を推進していきたいと思います。
また、各国における省エネや環境に対する規制、基準についても、業界意見を取り纏め、各国行政へ的確に反映していきたいと思います。特に環境規制が進む欧州には、以前から欧州事務所を置き、早急かつ的確な意見反映を行っておりますが、引き続きこの活動を推進して参りたいと思います。
Ⅲ.検定制度の充実
従来、製品の検定制度は当工業会が運営しておりましたが、平成23年4月から「一般財団法人日本空調冷凍研究所」を検査試験業務を実施する機関として設立しました。また、検定制度の基本規定も見直し、平成24年度からの運用を行う予定としております。昨年には一昨年のパッケージエアコンとガスエンジンヒートポンプの新設備建設に加え、ヒートポンプ給湯機の試験設備も新設しました。特に平成24年度はパッケージエアコンの検査範囲の拡大やガスエンジンヒートポンプの性能検定制度の導入の為の各企業設備の相互校正、ヒートポンプ給湯機の検定制度導入のための体制つくりを進めていきたいと思います。
「HVAC&R JAPAN 2012」の開催について
本年は「HVAC&R JAPAN 2012(第37回冷凍・空調・暖房展)」を2月14日から4日間の日程で東京ビックサイトにて開催いたします。
本展示会は「あらゆる温度の未来が見える」をキーワードに当工業会があらゆる温度帯の制御機器を取り扱っていることをアピールするのみならず、世界をリードする高度な技術力、環境に配慮した最新の機器、システム、ソリューションを一堂に展示することにより、出展各企業のビジネスチャンスの創造や最先端情報の発信の場として企画しております。さらに、行政活動、学術、企業技術などを発表する各種講演会やセミナーの開催、出展者による製品の動向の紹介など多数の併催行事も予定しております。
2年に1度のこの開催をビジネスチャンスとして活用頂き、出展企業各社のハード、ソフト両面にわたる最先端のテクノロジーの披露と来場者の有意義なビジネス交流の場としての活用を期待しております。多数の御来場をお待ちしています。
今後の業界の活動方針について
当工業会が扱う製品・機器は日本の基幹産業のひとつであり、家庭用から業務用までの空間の空調機として、食品の物流・保存に関わる冷凍・冷蔵機として、またはカーエアコン分野、先端医療分野など、幅広い分野で扱われております。
国内では、東日本震災後、更にクローズアップされてきた省エネ性に関し、多エネルギー消費機器であるという一方、再生可能エネルギーを利用するヒートポンプ技術を核としているという点の両面から、今後もますます要望が課せられるものと思います。日本の業界は世界でもトップクラスのインバータ技術やヒートポンプ技術を有していますが、今後もさらに社会の要請に応えて効率の高い製品・機器の開発に取り組み、エネルギー消費削減と環境配慮の両面から期待に応えて参りたいと考えます。
海外に対しましては、国内で築いた、ヒートポンプ技術を展開するとともに、新興国・途上国におけるHCFC代替冷媒の選択や性能評価基準の構築等に関して、積極的に支援をして参ります。
国際的な工業会の交流機能としてはICARHMA(冷凍空調工業会国際評議会)が毎年開催されていますが、この会合を有意義にするために、日本としての立場や対応を明確にしていきたいと思います。特に本年度は日本がICARHMAの開催国になります。加えて、隔年で主催する環境と新冷媒国際シンポジウム(神戸シンポジウム)も開催年に当たるため、日本の技術をぜひ積極的に広めたいと思います。
平成24年度からは、当工業会は公益法人制度改革に伴い、一般社団法人として出発する予定です。今後とも関係省庁、関係団体、会員各社そして報道機関の皆様方の尚一層のご指導・ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
年頭所感(森雅彦 森精機製作所社長/石川則男 オーエスジー社長)
世界中の多様化する要望に応えるため、使いやすい機械の開発に努める
●森精機製作所 社長 森雅彦
新年明けましておめでとうございます。
昨年は東日本大震災という大きな災害にみまわれ、さらには急激な円高、高い法人税、TPP(環太平洋経済連携協定)をはじめとする貿易自由化の遅れ、労働規制、温室効果ガス抑制のための環境規制の強化に加え、東日本大震災後の電力の供給不足も加わり六重苦と呼ばれ、企業にとって非常に厳しい1年でした。その中でも日本の工作機械産業は、知恵を出し合い、改善改良を重ねることで成長しております。このような厳しい環境の中でも成長を持続している工作機械産業は日本の産業の中で競争力のある産業と思います。本年も昨年と同様に、厳しい1年になると予想されますが、このような厳しい環境を乗り越えていかねばなりません。
工作機械の価値は3分の1が製造(工場)で、3分の1が顧客ニーズに合わせた新たな加工技術の提案、3分の1が長期にわたるサービスや修理によって生み出されます。
当社においては、本年度よりスタートした中期経営計画「GQ-C-SI 123」達成のために、厳しい環境の中でも売上を達成することができる強い組織である「強靱な営業・強靱な工場」を実現させ、グローバル化・国際化と大上段に構えるのではなく、自然に外国人とチームを組み、多様性を生かして仕事をするような企業になるように「DMGとの協業」を進め、お客様に納入した機械を10年・20年の長期間にわたりサポートするため、今後も強固な財務体質・緻密なパーツ供給を維持していくために、製品と業務の品質を一桁向上させる「一桁違う品質」を目指します。
また、急激な円高に対しては、欧州購買と北米工場(2012年7月操業開始)での生産により、費用のドル化・ユーロ化を進め、為替リスクの軽減を図ります。
特にギルデマイスター社との協業においては、出資比率の相互の引上げにより、より強い企業体となりました。当社におけるグローバル化とは、ギルデマイスター社との協業をいかに実りあるものにするかに尽きます。昨年9月から、ドイツにおいて共同販売・サービスを開始し、本年には欧州全域に広がり、ロシア・中国・南米を除く全世界での協業体制が整い、春からはギルデマイスター社と現場交流プログラムを開始します。また、両社の協業強化だけでなく、お客様から見て更に使いやすい機械の開発に努めます。
世界中のお客様の多様化するご要望に、末永くお応えするソリューション力と俊敏な対応力をつけるために切磋琢磨して参ります。
本年も、変わらぬご支援、ご愛顧を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
「着実に前へ」
●オーエスジー 社長 石川則男
2012年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。
また、東日本大震災、福島原発事故で被災された方々に慎んでお見舞い申し上げますと共に、被災地の一日も早い復興を心より祈念申し上げます。
世界経済はリーマンショックを経てようやく回復の足取りを見せておりましたが、わずか2年弱で欧州金融不安が高まり、再び不透明な状況に陥りました。
また長期化する円高は製造業の努力の範囲を大きく逸脱しており製造業の空洞化は日本経済最大の課題と言っても過言ではないと思われます。
そのような中、企業に求められているのは市場の変化、顧客の変化に対応する機動力であり、顧客のニーズを捉える力が試される時代であると思います。
当社は長期的な視野に立ってグローバルでの顧客への対応力と最適地生産の強化に取り組んでおり、2012年も着実に前に進みたいと思います。顧客への対応力は、グローバルレベルでのサービス体制の強化に加えて、現地生産を強化すべく、アジアだけでなく欧米でも大きな投資を計画しています。メーカーの生命線は、新製品開発でありどのような製品も必ず進化する余地があると思います。日本国内は、特に製品開発部門への投資を今まで以上に積極的に行いたいと考えます。
最後になりますが、日本経済の益々の発展と皆様のご健勝を祈念いたしまして年初のご挨拶とさせていただきます。
第9回(平成23年度)新機械振興賞 経済産業大臣賞にマツダ「高圧縮比高効率ガソリンエンジン」
機械振興協会(会長=庄山悦彦氏)は、平成23年度の新機械振興賞の受賞者を決定した。
新機械振興賞は、従来の機械振興協会賞(昭和40年度創設)と中堅・中小企業新機械開発省(昭和45年度創設)を統合し、平成15年度に発足したもので今回が9回目にあたる。
新機械振興賞の表彰対象は独創性、革新性及び経済性に優れた機械工業技術に係る研究開発およびその成果の実用化により新製品の製造、製品の品質・性能の改善または生産の合理化に顕著な業績をあげたと認められる企業等及び研究開発担当者である。
今年度は、経済産業大臣賞に「高圧縮比高効率ガソリンエンジン」(マツダ)、中小企業長官賞に「省エネ型精密空調装置」(オリオン機械)、機械振興協会会長賞に「チップソーを用いた3次元加工CNC木工旋盤」(旭川機械工業/北海道立総合研究機構/旭川産業創造プラザ)、「1モーター2クラッチ式パラレルハイブリッドシステム」(日産自動車)がそれぞれ受賞した。
表彰式は平成24年2月24日、機械振興会館ホール(地下2階)にて行われる。
経済産業大臣賞 「高圧縮比高効率ガソリンエンジン」 マツダ
推薦:日本自動車工業会
●業績の概要
近年ハイブリッド車や電気自動車の開発が活発化し、電気デバイスによる燃費改善技術の採用が進んでいるが、2020年時点でも自動車の多くは内燃機関を動力源として搭載していると考えられている。さらに、今後、アイドリングストップや減速エネルギー回生等の電機デバイスが量産効果によるコスト低減で普及していくと思われるが、その効果を十分発揮させるためには、ベースとなる内燃機関の効率向上が重要である。そこで、理想の燃焼を追求した高圧縮比の新燃焼コンセプトを中心に、吸廃棄システムや機械抵抗損失を徹底的に見直すことで、高効率で高トルクなエンジンを開発した。その結果、デミオクラス(1.3Lエンジン)では10-15モードで30㎞/Lという他社のハイブリッド車と同等の燃費を実現した。
●技術上の特長
高圧縮比化によって効率向上を図る場合、全負荷付近において温度・圧力が高くなりすぎて燃料と空気の混合気が通常の点かプラグからの火炎伝播を待たずに自己着火するノッキングが発生し、激しい音やピストン溶損をもたらす。そのため、ノッキング防止のために着火時期を遅らせる必要が生じてトルクが低下するため、現行の圧縮比は10~11程度が商品化されるに留まっている。そこで、本開発では、高圧縮比化に伴い現れる点火前の化学反応を新たに見出したことにより、その活用と従来からのノッキング改善手法である急速燃焼と混合気冷却に最新技術を導入し、高圧縮比ガソリンエンジンを成立させるための燃焼技術を開発した。
①燃焼室形状によるノッキング改善
高圧縮比化でノッキングが発生しやすくなるのは、圧縮比の向上に伴って燃焼室形状が扁平になり火炎伝播に障害をお呼びし燃焼速度が低下することにある。そこで、筒内流動を元帥させないことと、点火プラグ直下の初期火炎面をピストンに接触し難くして初期火炎をスムーズに成長できるよう圧縮比を14.5にして、ピストン頂部のキャビティーを考案し、燃焼速度の向上を図った。
②噴霧によるノッキング改善
燃料と空気の混合気を噴霧の気化潜熱によって効果的に冷却して温度を下げるため、従来のスワールインジェクターから、噴射方向に自由度のあるマルチホールインジェクター(MHI)を新たに採用し、ピストンからではなく混合気から熱を多く奪える噴霧配置にした。その結果、ノッキングの発生しやすい吸気側の温度を平均で約10K低くでき、ノッキングを防止できた。
③排気系による出力/燃費向上
低コストでハイブリッド車同様の燃費を得る為、冷却EGR(排気再循環)システムを開発した。EGRクーラで冷却された排気ガスを吸気に還流させ、自己着火発生までの時間を長くすることでノッキングの抑制とポンピング損失の低減を図り、3.5~5.0%程度の燃費改善を実現している。
●実用上の経済性
エンジン本体の燃費を約15%改善し、デミオクラスでは10-15モードで30㎞/Lという他社のハイブリッド車と同等の燃費をモーターなどの大型の電機デバイスなしで実現することができる。そのため、燃費面のみならずコスト面・重量面からも大変経済的な車づくりに貢献できる。
中小企業長官賞 「省エネ型精密空調装置」 オリオン機械
推薦:長野県工業会
●業績の概要
電子デバイスや精密加工機械ではより高精度に制御された温度かでの加工生産が要求されている。しかし従来の冷凍機とヒータを用いた温調制御では、消費電力が大きくなるという問題があった。この問題を解決するために、ヒートポンプバランス制御による省エネ型精密空調装置を開発した。ヒートポンプバランス制御とは、1台の空調機で冷房と暖房を同時に運転・制御しているイメージである。冷凍サイクル装置において、冷媒圧縮機の吐出側に配した制御自在バルブを備えた分配手段によって、過熱流路と冷却流路とを流れる熱媒体の分配比率を変更することにより、流体の過熱量と冷却量とを調整できるため、温度調整が可能になる。これにより、電気ヒータを用いることなく精度の高い温度調整ができ、従来の冷凍機とヒータを用いた温調制御方式により、最大80%の省エネルギー化を実現した。
●技術上の特長
従来の冷凍機とヒータを用いた温調制御方式では、冷却器で冷やし、その後電気ヒータで加温し調整する。その際、電気ヒータは吸込空気温度より高い設定温度の場合を想定し、装置が保有する冷却能力の約1.5倍の容量のものを搭載しなくてはならないため、消費電力が大きくなるという問題があった。この問題を解決するために、ヒートポンプバランス制御による省エネ型精密空調装置を開発した。装置の冷凍サイクルにおいて、圧縮機の吐出側に配した電磁弁によって、加熱流路と冷却流路とを流れる熱媒体(冷凍冷媒)の分配比率を変更する(分流制御を行う)ことにより、加熱手段と冷却手段とを通過する温度調整対象の流体に対する過熱量と冷却量とを調節することができるため、精度の高い温度調整が可能となる。さらに冷却流路の凝縮器で放熱した熱エネルギーを加熱流路のヒートポンプ手段(蒸発器)で吸熱して圧縮機に戻すため、冷凍サイクルの能力が高くなる。この分を加熱流路に供給できるため、広範囲の温度調整が可能となった。また、電気ヒータを用いることなく温度調整を行うことが可能となり、従来の冷凍機とヒータを用いた温調制御方式より、最大80%の省エネルギー化を実現した。
精密空調機PAPシリーズでは、18~30℃の広範囲温度設定域と±0.1℃を性能保証した高精度制御と、さらに設定温度に対して±7℃までの吸込空気温度に対処できる高機能精密空調機が実現できた。
●実用上の経済性
従来の冷凍機とヒータを用いた温調制御方式と比較すると、小型精密空調機の2馬力クラス(処理風量:20m3/min)において、11.7KWの消費電力に対し3.2KWに抑えることに成功し、73%の省エネ効果を得た。また、軽負荷時には最大80%の省エネルギー化を実現した。
その経済効果は、以下のように見積もられる。
24時間運転/日、300日/年、従来機負荷率:85%、電力料:12円(電力会社8社の概算および平均値)/Kwhとすると、((11.7Kw×0.85Kw)-3.2Kw)×24時間×300日=48,564(Kwh/年間)
⇒582,768円/年間の節電が見込まれる。Co2(温室効果ガス)の削減は、以下のように見積もられる。
48,564Kw/年間×0.410㎏/Kwh(電力会社8社の概算および平均値)=19,911(㎏Co2/年間)削減。
機械振興協会会長賞 「チップソーを用いた3次元加工CNC木工旋盤」 旭川機械工業/エーリンクシステム/北海道立総合研究機構/旭川産業創造プラザ
推薦:北海道立総合研究機構
●業績の概要
本装置は、北海道立総合研究機構(道総研)林産試験場で研究開発された、高速回転するチップソー(丸のこ)の動きと主軸の回転をコンピュータ制御することにより複雑な3次元(3D)形状の加工ができるCNC(Computer Numerical Control)木工旋盤を実用化に向けて開発した工作機械装置である。実用化にあたっては、障がい者の方々にも簡単かつ安全に作業が行える装置として開発した。
●技術上の特長
椅子などの家具では、平面や縁系のみならず自由な曲面などの3次元的デザインを取り入れる蛍光があり、家具以外の木工クラフト品においても同様の傾向があるが、家具ほど進んでいないのが現状である。その原因は、形状を変更するときには新たに型を作り直す必要があること、厚みの熱い刃物を用いているので作用する力が大きく材料を破損させる恐れがあることである。そのため薄くて細い形状を加工することができないという問題があった。このような問題を解決するために、型の代わりにコンピュータ上で作られた3Dモデルを用いること、刃物の代わりに市販の丸ノコ、すなわちチップソーを用いることで解決した。
開発したCNC木工旋盤は、安全確保のため、装置全体を箱状のケースに収納することともに、加工中は扉を開けることが出来ず加工終了もしくは非常停止にてチップソーが停止していないと開けることが出来ないといった安全装置(インターロック制御)の装備や市販のゲームコントローラーを用いての操作も可能とし、障害者の方々にも簡単かつ安全に作業が行える装置になっている。本装置では、材料の端面を自動検知し、端面を自動で切り落としてから、自動加工を開始するため、長さの不揃いの材料でも毎回位置合わせをする必要がない。また、正方形になっていない四角の角材や木材の端面が斜めにカットされたもの、他で使用されて残った半端材などを使用し、主軸のチャックに原材料をセットする際、主軸の中心に対して斜めにセットされてしまうことがあるため、水平・垂直にレーザーラインを材料に照射し、極端に材料が偏心しないように補助線を表示している。
本装置は、一度の送りで直径1mmの円柱を切削することが可能であり、通常の木工旋盤では非常に困難な、らせん状のスクリューやねじれを加えたような形状の加工を行うことができる。
●実用上の経済性
社会就労センターは全国に約2900施設あり、うち木工や工芸の事業を行っている施設は約800施設存在する。一施設あたりの木工機械に係る設備投資額を500万と想定すると、社会就労センターにおける木工機械の市場規模は約40億円と積算できる。その中でも、本格的に木工製品の製造を行っている中規模施設では、木工設備や専門スタッフが整備されており、テーブルの脚や木製玩具などの部品を製造するために本装置を導入したいとの意見を得ている。同様の施設は、全国規模では50施設程度あると推測され、将来的には障がい者施設だけではなく、本事業のノウハウを活かし、木工クラフト企業や職業訓練を行っている教育訓練施設など、さらに多くの市場に広がると予想できる。
機械振興協会会長賞 「1モーター2クラッチ式パラレルハイブリッドシステム」 日産自動車
推薦:日本自動車工業会
●業績の概要
これまで様々なハイブリッド車両が開発されているが、1モータ2クラッチパラレル型は、走行中のエンジン停止・軌道、変速、発進などにおいて乗用車に求められるスムースさを実現することが難しく、普及していなかった。今回、独自のモーター制御技術、リチウムイオンバッテリーなどを開発することで、これらの課題を解決し、3.5Lエンジンを搭載する高級車において、1.5Lクラスの小型車並み燃費性能を実現した。開発した1モーター2クラッチパラレル型は、乗用車用古フルハイブリッドとして最も軽量シンプルで燃費特性に優れ、さらにトルクコンバータを廃し効率を高めた世界初のシステムである。
●技術上の特長
1モーター2クラッチパラレル型は、エンジン走行時には、クラッチ1と2がつながり、エンジンの動力とモーターの動力によりパワフルな走りが実現できる。モーター宗浩司には、クラッチ1が切り離され、停止したエンジンがモーターと切り離されることによりモーターへの負荷がなくなり、低燃費な走行が実現できる。このように1モーター2クラッチパラレル古ハイブリッドシステムは工藤性能、燃費において優れた性能を示すが、エンジン始動時の振動等、スムースさに問題があった。この問題を解決するために、モーターのみによるスムースなシフトチェンジとエンジン始動、スムースな発進とクラッチ耐久性の両立を図る高速で正確なモーター制御技術を開発した。また、モーター制御に応える高出力で素早い充放電が可能なリチウムイオンバッテリーを開発した。
発進制御において、高応答のモーター制御による回転速度とクラッチトルク容量の二つのフィードバック構成を採用することによりスムースさと耐久性を両立させている。すなわち、クラッチ2のトルク制御精度を向上させることにより、クラッチ耐久性が向上している。スムースさとレスポンスを両立するシーンでは、1秒に満たない時間に、6種のモーター制御要求に高精度で応答する必要がある。このような急な制御では、サージにより発振してしまうが、内部モデルをもつロバスト制御により高速且つ振動しないモーター制御を実現している。また、この制御は高速で電力の出し入れが可能な新開発のリチウムイオンバッテリー技術により、実現している。
●実用上の経済性
本ハイブリッドシステムにより既存のガソリンエンジン車に対し大幅な燃費向上(+90%)を実現し、1.5Lクラス小型車並みレベルを達成した。また以下前提条件ではガソリンエンジン車と比較して年間燃料使用量▲464L削減、年間Co2排出量▲1068㎏削減となる。
(前提条件)
・ハイブリッド車19.0㎞/L(3.5Lガソリン、7AT)10-15モード
・ガソリン車 10.0㎞/L(3.7Lガソリン、7AT)10-15モード
・日本全国の年間走行距離:9,807㎞
・ガソリンのCo2排出量:2.3㎏/L