機械式時計に搭載される機構は、部品点数が多いうえ、各部品の軽量化はもちろん高精度につくらなければならず、微妙なサジ加減も必要で製作には高度な技術を要する。動作機構は非常に複雑で繊細、かつ美しく、時間を刻む“もの”とはいえ高い芸術性が存在している。
たった3センチほどの腕時計に全ての要素技術がぎっしり詰まったトゥールビヨンを完成させる時計師は世界でもほんの十数人しかいないとされている中、2009年に浅岡 肇氏が日本で初めて製造に成功し、その強烈な独自性を放つ時計は世界中から注目された。この時、部品のほとんどをたった独りで製作した浅岡氏の存在は、世界のトップクラスに立つ者として大きな称賛を浴びた。
現在、浅岡氏の時計づくりに切削工具メーカーのオーエスジー、精密加工分野で活躍している由紀精密が加わり、「プロジェクト・トゥールビヨン」が発足している。超高級時計は、浅岡氏の設計、精密加工のための特殊工具をオーエスジーが、精密加工を由紀精密がそれぞれ担当し、三位一体で日本発の“最高級技術”の結晶を世界に見せつける日が近づいた。独立時計師、浅岡肇氏を訪ね、お話を伺った。